ドラマ化もされた大ヒット漫画『明日、私は誰かのカノジョ』(をのひなお・著)を皮切りに『地雷忍者るるの失恋』(西瓜士・著)などホストクラブやホス狂いをテーマにした人気作が続々と誕生し、ROLAND(ローランド)のようにお茶の間の人気者となるホストも誕生──ホストムーブメントが巻き起こるなか、“聖地”といわれる東京・歌舞伎町では、恐喝事件に殺傷沙汰、果ては飛び降りによる自殺未遂まで、連日あらゆるトラブルが起きている。とりわけここ最近大きな問題となっているのは、「売り掛け」問題だ。
歌舞伎町の住人を取材した『ホス狂い~歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る~』の著書があるノンフィクションライターの宇都宮直子氏が“ホス狂い”当人たちに売り掛けをめぐる問題について単刀直入に聞いた。
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売り掛けとは、現金やクレジットカードなどでその日に料金が支払えない客が「ツケ」にすること。
特に缶チューハイ1本が2000円もする非常に単価の高いホストクラブにおいて、売り掛けは珍しいことではなく、私が取材してきた中でも100万から200万円程度の「カケ」をしているホス狂い女性はザラにいた。
しかし11月14日、売り掛けをめぐる諍いが元となって客の女性に暴行を加えたホストが逮捕される事件が起きたことにより、テレビや新聞などで「“ホスト沼”にハマる女性の実態」などと売り掛けシステムに苦しむ女性の実態が取り上げられるようになった。
SNSでも「ホストクラブへの規制」や「売掛け制度の撤廃」が声高に叫ばれ、11月17日には新宿区長がホストクラブの売り掛け金を自主規制するように呼びかけ、ついには国会でも議論される事態に発展。実際にローランドは「一連の報道を重く受け止めた」として運営するホストクラブ全店で「売り掛け禁止」に踏み切ることを宣言した。
膨大な借金に苦しむ女性たちを救うべく、自治体や国まで動き始めた形になるが、当人たちに話を聞いてみると「私たちにとって、売り掛けは必要なんです」と思いもよらない、しかし切実な答えが返ってきた。