「大きな騒ぎになるのはわかっていました。それでも“あの人”と野球をするのはもう限界だった。だから、マスコミもファンも巻き込んだ手段をとるしかなかったんです」──言葉を選びながらも悲痛な気持ちを口にするのは楽天の現役選手Aだ。“あの人”とは11月25日、複数のスポーツ紙にハラスメント行為が報じられた安楽智大(27)のことである。
スポーツ紙は複数選手からの告発を受けて一斉に報道。球団は事態を重く受け止め、11月30日、球団社長は「(ハラスメント行為は)ほぼ事実と判明しました」とし、契約保留者名簿から外すと発表。事実上の自由契約処分とした。渦中の選手たちは何を思い、告発という手段をとったのか。「若手選手たちは何年も耐えてきた。その苦しみを知ってほしい」──冒頭の現役選手Aは取材に応じた理由をこう口にする。【前後編の前編】
「安楽さんが後輩に強くあたるようになったのは3年ほど前からです。入団後、先発投手としてはあまり活躍できていませんでしたが、中継ぎに転向してから一軍に定着し、チームでも中心選手になりました。ただ安楽さんはそこから急に自分の“派閥作り”をはじめた。ターゲットになったのは、若手選手たちでした」(現役選手A。以下同)
スポーツ紙など各社が報じたのは、安楽がロッカールーム内で若手選手を逆立ちさせ、下着を脱がせて陰部を露出させるといった“いじめ”とも受けとれる行為だ。このほか、過去に同球団に在籍した選手も告発しており、キャンプ中に頭部を平手でたたかれ「むち打ちみたいになった」と被害にあったことを明かしていた。