「糖質オフに高たんぱく、ロカボ、塩分控えめ……。キャッチコピーだけ見ていたら健康食品のコーナーかと思ってしまいそう。いまどきのカップ麺ってすごいんですね」。都内在住の主婦・Mさん(53才)は、スーパーで久しぶりにインスタント麺の棚を見て驚いた。
「ほかにもビタミンを多く摂取できる商品や低カロリーのカップ麺もたくさんあるし、これなら健康にもよさそう。ひとりランチのときのために、いろいろ買いだめしておこうと思います」(Mさん)
長らく“体に悪いけれどおいしい”が合言葉だったカップ麺だが、近年各社は消費者の健康志向に応える形でヘルシーを謳う商品を次々に発売し、話題を集めている。しかし、健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子さんは待ったをかける。
「パッケージのキャッチコピーにつられて日常的に食べることで、体に悪い影響をおよぼす可能性は少なくありません。どの成分がどれだけ入っているのか、“ヘルシー”の根拠を知っておくべきです」
名ばかりのヘルシーにだまされないためにはどうすべきなのか──実態をみていく。
麺を揚げる油は発がん性が指摘される
専門家たちが声をそろえたのは、そもそもカップ麺そのものが製造の過程からして“ヘルシー”とは程遠いということ。米ボストン在住で内科医の大西睦子さんが指摘する。
「カップ麺はブラジル・サンパウロ大学公衆衛生学部の研究者が考案した『NOVA』という食品分類法において、工場で高度な加工がされ、数多くの添加物が含まれる『超加工食品』に分類されている。
超加工食品に分類されているものはカップ麺のほか、炭酸飲料やポテトチップス、チキンナゲット、ホットドッグなどの食品であり、それらの摂取量が多い人たちはさまざまな研究でがんや認知症、2型糖尿病、心臓病、うつ病などの疾患のリスクが高くなっているという報告があります」
特に麺を油で揚げる際に使われるパーム油が曲者だと大西さんは続ける。
「パーム油は海外から輸入されていますが、その際に酸化防止剤として『BHA(ブチルヒドロキシアニソール)』が添加される。同じ酸化防止剤でも、高価で安全性が高い『トコフェロール』と違い、『BHA』は過去に国内の動物実験で発がん性が指摘されています。にもかかわらず『BHA』は原材料への表示義務がなく、商品パッケージには書かれていないのです」
麺のコシや風味を出すために使われる添加物の「かんすい」が厄介者だと話すのは食品問題評論家の垣田達哉さん。
「天然のかんすいは塩類に炭酸ナトリウムしか含みませんが、超加工食品に用いられているのは人工的に作られたもので『リン酸塩』が含有されている。リン酸塩は過剰摂取するとカルシウムの吸収が抑制され、骨粗しょう症や腎機能の低下、甲状腺機能に悪影響が出る危険性があるのです」