お笑いタレントの村上ショージ

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分け合う関係

 歌のレッスンは厳しくても、それが終われば羽鳥の家族とも一緒に楽しく食事をする。そうした師弟関係も描きたかったと『ブギウギ』制作統括の福岡利武氏は語る。

「スズ子が羽鳥の家で、彼の家族と食卓を囲むシーンも多く、2人はやがて家族ぐるみの付き合いになっていきます。昭和の時代は、そのような師弟関係は珍しくありませんでしたが、今の時代はなかなかないと思います。モデルとなった笠置シヅ子さんと服部良一さんは“純粋に良いものを生み出そう“という思いを共有している関係が素敵だなと思いまして、そのような関係性をドラマでも強調して描きたいと考えました」

 ただし、令和の時代だけに、上下関係にある羽鳥とスズ子の描き方には注意を払ったという。

「ハラスメントに厳しい時代なので、台本を作る上で羽鳥の指導がパワハラに映らないように気をつけました。レッスン中に羽鳥が何度も歌の出だしをやり直させるシーンでは、『もう一度』と繰り返す草なぎさんの芝居がどこかコミカルでしたし、スズ子が追い詰められるような描き方にならないようにしました」(同前)

 キーマンとなる羽鳥役を草なぎに託したことで「嬉しい誤算」もあったと福岡氏は続ける。

「僕は大河ドラマ『青天を衝け』(2021年)でも草なぎさんとご一緒していますが、その時、草なぎさんが演じたのは“最後の将軍“徳川慶喜で複雑な感情を抱える難しい役柄でした。一方、撮影現場でお話しすると、草なぎさんご自身が持つ明るさが素敵だなと思っていました。

『ブギウギ』のキーマンである羽鳥は、音楽への純粋な思いを持ち、戦時下でも明るさを失わない前向きなキャラクターにしたかった。それで草なぎさんがピッタリだと思い、オファーしました。実際に草なぎさんの芝居を見ると、こちらが想像していた倍以上に明るく前向きな羽鳥を作り上げていただいたのは嬉しい誤算でした」

 前出の碓井氏が言う。

「将棋の藤井聡太八冠の師匠である杉本昌隆八段は『師匠は技術や魂を弟子に伝承し、弟子はひたむきさを師匠に伝える。その姿を見て師匠は刺激を受ける』と語り、こうした師弟関係を“分け合う関係“と表現していました。

 ならば、スズ子と羽鳥の関係も“分け合う関係“という表現がしっくりきます。男女という枠を超えて、音楽で結びつき、互いのひたむきさから刺激や励みを分け合っている。そうした理想的な師弟関係が、視聴者の胸に響くのでしょう」

 師匠の厳しくも温かい愛を糧に、スズ子はスターダムへと駆け上がる。

※週刊ポスト2023年12月15日号

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