タバコを片手にピースサインをする母親

金髪姿で、タバコを片手にピースサインをする母親

「娘が亡くなってつらいとき、一緒に支えてくれた」

 母親が逮捕された2021年11月当時、その夫も警察に追われる身だった。同年10月21日夜、大阪市阿倍野区で、府警の警察車列を襲い、押収中だった車両の中から荷物を奪ったという強奪事件で公開指名手配されていたのだ。

 夫ものちに逮捕され、すでに懲役8年の判決が確定。現在は受刑者となっているが、大阪地裁で開かれた夫の公判には、兄妹の母親が「妻」として証人出廷していたという。

「最初は大津事件の母親であるとは分かりませんでした。手錠などで身柄拘束されているし、証言でも『娘が亡くなっている』『裁判中で無罪主張をしている』といった話題が出てきていたので何者だろうと思っていましたが、母親の公判を傍聴し、同一人物だと分かったんです」

 そう語る傍聴人によれば、兄妹の母親は、2022年7月に大阪地裁で開かれた夫の公判で、同年2月に結婚したことを明かし、その理由を次のように語ったという。

〈娘が亡くなってつらいとき、一緒に支えてくれた〉

 また〈常に私のこと気にかけてくれて、友達思い。お金を送ってくれる〉と、常に夫が気遣ってくれていると明かした。

 お互いそれぞれ刑務所に行くことになるが、夫のほうが出所は遅い。兄妹の母親は〈一日でも早く帰ってきてほしい。被告人が社会にいてくれないとつらい。家族で頑張ったら生活できると思う。ちゃんと働いたら真面目な人なので、私が支えていきたい〉と、寂しさをにじませながらも、今後夫を支えながら共に生きていくことを誓っていたという。

「被告人質問では、夫も『悪い仲間とは縁を切ろうと思う』と、今後二度と犯罪に手を染めないことを約束し、『妻には連れ子が3人いる。大黒柱となってしっかりしたい』と父親としての決意も見せていました。一審判決で懲役8年が言い渡された日は、傍聴席にいた知人らしき人たちに『ごめんって言っといて』と妻へ伝言をしていて、本当に妻のことが好きなんだなと感じさせられました」(前出・傍聴人)

 早く社会復帰して家族を支えたいという思いからの「ごめん」なのか。母親は、違法薬物は自身のものではないと訴えていたが、今年10月24日、控訴審判決でも「違法薬物は自分のものではない」という主張は一審同様認められず、控訴は棄却された。上告せず確定している。

 息子は少年院、夫は刑務所、そして自分も刑務所に……家族全員で顔を合わせる日が来るのは、当分先のことになる。

◆取材・文/高橋ユキ(フリーライター)

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