ネット上で出会った相手に“愛の言葉”を囁き、大金を騙し取る「国際ロマンス詐欺」──。約3.9億円を騙し取った犯行グループの“主犯格”としてガーナの首都アクラで拘束され、昨年8月、日本へ強制送還されたのが、森川光被告(60)だ。詐欺罪などで起訴され、現在、大阪地裁で審理が続いている。現地にいるガーナ人も8人加担しており、ガーナ側の主犯格で“ブルー・コフィ”の異名を持つナナ・コフィ・ボアテイン(34)は米国へ逃亡中だ。森川被告が獄中で語った半生とは……。ノンフィクションライターの水谷竹秀氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
「ガーナで金融ビジネスをしないか」
森川はかつて不動産業界で働き、東京都内の一等地に会社を構えていた。しかし、リーマンショックで会社を潰してしまう。路頭に迷っていた頃、知人に「ガーナで“金融ビジネス”をしないか」と持ち掛けられた。日本人の出資者を募り、2015年5月、ガーナの首都アクラへ飛んだ。51歳だった。森川が振り返る。
「最初は安ホテルに泊まりながら、出資者の支援金で暮らしていました。ビジネスは結局、詐欺みたいなもので、1700万円ぐらい注ぎ込み、すべて騙し取られました」
何度聞いても胡散臭く感じられる“金融ビジネス”に飛びついた時点で、森川は詐欺師の世界に片足を突っ込んでいたのかもしれない。そんな時、もう一人の主犯格、コフィと出会う。
「泊まっていたホテルで受付をしていました。日本語で話しかけられ、仲良くなった。(26歳年下の)彼を息子のように可愛がっていましたね」
そのコフィから、やがて「送金ビジネス」を持ちかけられる。日本からの送金を森川が用意した口座経由でコフィたちに流すと、10%の「手数料」が受け取れるのだという。
これこそがロマンス詐欺との最初の接点だったのだろう。森川も最初こそ断わったが、ガーナの入国管理局とのトラブルをコフィに解決してもらった見返りとして引き受けることにした。森川は日本人の知人に声をかけ、コフィらに複数の銀行口座を提供した。