自分は大丈夫、と安易に思い込まないほうがいいのがこの種のテーマだ。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。
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今年の暮れは、久しぶりに職場の忘年会があるという方も多いでしょう。コロナ禍で接点が少なかった若手社員と親睦を深めるチャンスです。いっぽうでなまじ接点を持ったが故に、若手社員から「この上司、ダメだ」と見捨てられることにもなりかねません。むしろ、後者の可能性のほうが高いかも。
しばらくぶりの職場の飲み会で、おじさん世代の側もカンが鈍っていたり、言ってはいけないセリフを忘れていたりします。やらかし1秒、冷たい目一生。あらためて「忘年会でのNGワード」をチェックしておきましょう。
一発退場! 昭和の香りが漂うメガトン級のNGワード5選
まずは、昭和の香りが漂うメガトン級のNGワードから(「メガトン級」という形容詞自体、かなり昭和ですね)。「このぐらい言われなくてもわかってるよ!」と思うかもしれませんが、酔っ払ってしまうと、体に染みついた昔の癖が顔を出したりします。
その1「俺の酒が飲めないっていうのか!」
その2「気が利かないなあ。だから仕事も半人前なんだ!」
その3「おい、若手はなんか芸のひとつもやってみろ!」
その4「○○ちゃんは、クリスマスは誰と過ごすのかな?」
その5「△△さんの旦那がうらやましいよ。こんなイイ女と……(以下自粛)」
「なぜ言ってはいけないのか」の説明は、とくに必要ありませんね。若手のみなさんにおかれましては、上司の口からこういう言葉が飛び出したら、さぞ腹が立つかと存じます。ただまあ、腹を立てる価値もありません。四葉のクローバーを見つけたときのように、「珍しいものに出会えた。吉兆かもしれない」と思っていただけたら幸いです。
おじさんの常識は若手の非常識! ウンザリされるNGワード5選
さっきの5つの言葉ほど明確ではないにせよ、自分では「普通」と思っている言動が、若手を激しくウンザリさせることもあります。気が付かないうちに、人格を疑われたり信頼をなくしたりしているかもしれません。
その1「おい、ねえちゃん」「この皿、下げて」と店員さんに偉そうな態度を取る
その2「揚げ物ばっかりだな」と料理に文句を付ける
その3「醤油にわさびを溶くやつがあるか」とウンチクを垂れつつダメ出しをする
その4「俺たちの若い頃は~」と過去の武勇伝を語り始める
その5「せっかくの機会だから、本音で話そう」と無理やり心を開かせようとする
その1のように「こっちは客だぞ」という態度を見せるのは、昨今、人としてもっとも恥ずかしいことのひとつとされています。その2は、実際にイマイチな料理だったとしても、店を予約した幹事への配慮がまったくありません。その3みたいな調子でウンチクを垂れる人の知識は、往々にしてペラペラです(溶いてもOKという説もある)。
その4は、本人は貴重なアドバイスをしているつもりかもしれません。しかし、聞かされる若手はそうは思っていないし、本人の自信や自負とは裏腹に、タメになる部分を探し出すことは困難です。その5も、かなり迷惑で鬱陶しいアプローチ。「今日は無礼講だ」と同じで、言う側が「そう言える自分」に酔っているだけの空疎な言葉です。