東京都知事選(2020年)やその後の地方議会選、首長選にたびたび出馬し、話題となった「スーパークレイジー君」。昨年から故郷の宮崎で選挙への挑戦を続け、今年4月には宮崎市議に初当選したが、9月、知人女性への不同意性交致傷容疑で同県警に逮捕され、その後起訴された。同市議の長期勾留を受けた市議会は11月27日、市議が逮捕・勾留された後は議員報酬の支給を停止する新規定を盛り込んだ条例改正案を全会一致で可決している。
警察取材の長いジャーナリストの宇佐美蓮氏は、「スーパークレイジー君」こと西本誠被告逮捕に至る「県警の迅速な動き」に注目すべきという。宮崎県警が誇る「出色の捜査力」の秘密について、宇佐美氏が警察OBらの証言を交えて解説する。
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昨年の宮崎県知事選で落選するも今春の宮崎市議選で2位当選を果たした、「スーパークレイジー君」の名で知られる宮崎市議・西本誠被告(以下、スーパークレイジー君)。今年9月、女性への不同意性交致傷容疑で県警に逮捕されたため市議会から突きつけられた辞職勧告を拒否し、同月27日に起訴されたが、現職のまま越年しようとしている。
ただ、県警の動きは早かった。法曹関係者は「否認のため犯行の内容には言及しませんが、議員センセイに及び腰な警察にしては迅速でした」と話す。事件発生翌日に女性の被害届を受理した県警はその翌々日にスーパークレイジー君を逮捕。小規模ながら都道府県警の中でも評価の高い宮崎県警にはなにがあるのか。
辞職勧告を拒否したまま越年?
警察官の定員は35番目。宮崎より少ないのは12県警のみで、選挙人買収を巡る志布志事件の鹿児島県警、連続殺人を巡る北方事件の佐賀県警と、周囲の小規模警察が無罪確定で歴史的汚点を残す中、「宮崎は捜査2課を中心に比較的成績がいいんです」と警察OBは語る。
たとえば自衛隊・防衛省絡みの事件の捜査・摘発だ。同組織は隠蔽体質で仲間意識が強いため汚職が表沙汰になりにくく、1978年以降に摘発された収賄事件は東京地検特捜部や警視庁、愛知県警、北海道警と実績・規模共に充実した捜査機関が手掛けてきた。だが宮崎県警捜査2課は1999年に新田原基地の空曹を収賄容疑で逮捕しており「誇っていい実績です」(同OB)と言われている。
同県警の実績で賞賛に値するのが2006年の同県知事(直前に退職し正確には前知事)逮捕だ。当時大きなニュースになったので詳細は割愛するが、2006年11月に“官製談合”が発覚し安藤忠恕知事の関与疑惑が浮上。当初は関係を否認し辞職を固辞したが12月に辞任して競売入札妨害(談合)容疑で逮捕、翌1月には事前収賄容疑で再逮捕された。捜査関係者は「知事時代の犯罪で刑事訴追された知事経験者は戦後10人程。それもほとんど検察です。警察にとって宮崎の事件は金字塔なのです」と語る。