一方、「政治とカネ」の問題で自民党が揺れるなか、野党側の議員からはこんな反応があった。
「ここにきて、自民党もグダグダになってきたな。いきなり飛びだした機密費の話はこちらとしてはありがたい限り。裏金で浮上した『政治とカネ』の問題を、一気呵成に取り上げていきたい」
この議員からは野党としての存在感を示せていないなかで、与党に対する反転攻勢のきっかけにしたいという気持ちが滲んでいた。
機密費の疑惑に加えて、安倍派の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑については、東京地検特捜部の捜査が入っているだけに、その行方に多くの人が注目している。かつて政権中枢の近くにいた関係者が言う。
「自民党は長年ああいうことをしてきましたからね。パーティー券のノルマを与えられる各議員の事務所にとって、キックバックがあることが売り上げを増やすモチベーションにもなっていたわけで。誰もがそんなことを当然としてきたというのが本音です。
政治資金規正法が厳しくなって、そういう考えが通用しなくなってきた。政治団体同士の寄附は認められているから、派閥から議員の政治団体に寄附する形にして適正に処理すればいいんです。でもそうすると収支報告書に記載されて金の動きがわかってしまうし、正当な政治活動以外への流用もできない。それでは何かとやりづらいと、昔ながらのやり方をずるずると続けてしまったんでしょう」
官房機密費、選挙費用、パー券のキックバック。あらゆることが“ブラックボックス”とされてきた自民党の“裏金”問題が、ここに来て一気に噴出した。政治に関わる金はすべて記録を残し、いずれは公開するという原則を、今こそ確立すべきだ。野党もメディアも追及の手を緩めてはならない。
【プロフィール】
相澤冬樹(あいざわ・ふゆき)/1962年、宮崎県生まれ。東大法学部卒。1987年NHK入局。2018年に森友事件の取材の最中に記者職を解かれ退局。財務省の決裁文書改ざん問題で自殺した近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんの手記を遺族から託されスクープした。現在はフリージャーナリスト。主な著書に『メディアの闇 ──「安倍官邸 VS. NHK」森友取材全真相──』など。
※週刊ポスト2023年12月22日号