「朝日は独自の裏金リストを入手しているとしか思えない。そのリストの中身をいっぺんには出さずに、キックバックをもらった議員が説明から逃げると、待ち構えていたように小出しに報じて追い込んでいく。朝日はこの機会に安倍政権時代の遺恨を晴らすつもりではないか」

萩生田光一・政調会長(時事通信フォト)

萩生田光一・政調会長(時事通信フォト)

検察が味わった“二重の恥辱”

 朝日と安倍元首相の間には、朝日が2005年にNHKの番組改変問題への安倍氏の関与を報じて以来、長年にわたる対立の歴史があった。

 とくに第2次安倍政権時代の2014年、朝日が福島第一原発事故当時に現場対応にあたった東京電力の吉田昌郎所長(当時)の調書をもとに「命令違反し撤退」と報じた記事を取り消して謝罪、さらに過去の慰安婦報道を検証して取り消すと、安倍氏は「日本のイメージが大きく傷ついた」と厳しく批判。

 その後、朝日は森友学園問題をめぐる財務省の文書改竄事件などで安倍氏を追及したが、安倍氏はことあるごとにSNSや国会答弁で、「捏造体質は変わらないようだ」などとやり返すという応酬が続き、その過程で朝日のイメージが大きく傷ついたのは間違いない。

 一方、検察も安倍政権時代、官邸から人事介入を受けて“煮え湯”を飲まされた恨みがある。安倍政権は官邸の覚えがめでたい黒川弘務氏(元東京高検検事長)を検事総長に据えるために、有力な検事総長候補を飛ばしたうえ、検察官の定年延長まで行なったが、その黒川氏は賭け麻雀問題で辞任に追い込まれる事態になった。

 検察にすれば、安倍政権から人事をねじ曲げられた上、官邸が出世をゴリ押しした黒川氏が賭け麻雀を行なっていたことで検察全体の体面を失うという“二重の恥辱”を受けたわけである。

 その検察は安倍氏の死後、派閥の裏金問題で安倍派を重点的に捜査し、それに呼応するように朝日がスクープで安倍派を追い詰めるという“連携プレー”なのだ。

 自民党総裁選で最大派閥・安倍派の支持を得て総理になった岸田首相は、派閥の裏金という安倍時代からの“負の遺産”だけではなく、検察と朝日の遺恨まで継ぐことになったのである。

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