谷川議員の長男と元長崎県知事の娘が夫婦
この事業は国が総事業費2460億円をかけて長崎県の諫早湾の湾口に長大な堤防と水門を建設し、造成面積約942ha(うち農地約670ha)の広大な干拓地をつくった巨大プロジェクト。多くの水門が次々に閉じられていく光景は「ギロチン」と呼ばれ、大きなニュース(1997年)となった。
谷川氏は同じく県政の大実力者で、長崎県知事も務めた金子原二郎・元農水相とともにこの事業を推進したが、完成すると、設立されたばかりの農業生産法人が入植し、農地全体の約5%にあたる32haもの利用権を取得した。この農業法人は、谷川氏の長男(谷川建設社長)と、当時長崎県知事だった金子氏の長女という夫婦が設立したものだった。
この問題は「税金でつくった広大な干拓地を得たのは知事の娘と国会議員の息子の夫婦だった」と地元で大スキャンダルになり、金子氏が長崎県知事を退任すると、長崎県議会に「百条委員会」が設置されて入植の経緯が追及された。
その過程で、農業法人は設立申請段階では「谷川農場」という名称で谷川弥一・代議士も代表就任予定だったことや、入植した谷川氏の長男は社長業の傍ら年間90日、金子氏の長女は年間150日農業に従事するとなっていたが、実際には2人ともゼロ時間で全く農業に携わっていなかったことなどが次々に判明(長崎県議会の調査特別委員会中間報告書)。「将来の土地転売目的で入植したのではないか」と追及されていく。このときも、谷川氏は記者にこう開き直っている。
「息子の会社で実験農場を行なってきた。干拓地への入植はその一つで、何が問題だというのか。国会議員や知事の親族であることが問題なら、息子夫婦が離婚し、私が議員を辞職すればいいのか」
その後、この農業法人の入植は取り消されたものの、谷川氏の強引な利権誘導ぶりがわかる。この御仁にとって、4000万円程度のキックバックで批判を浴びることなど、何の痛痒も感じていないのかもしれない。