皮膚は紫外線や微生物などの外敵から体を守るとともに、体内からの水分喪失を防ぐ働きや皮脂、汗の分泌、体温保持、老廃物を外に出すなどの様々な役割を担う。注目すべきは内臓疾患、特に悪性腫瘍のサインが皮膚に現われる場合もあること。主に胃腸など消化器系の悪性腫瘍のサインが出現することがあり、普段とは違う皮膚肥厚や紅斑が出たら、専門医を受診したい。
日本の成人の皮膚面積は平均約1.6平方メートルで、体重の約16%の重量がある。皮膚は人体の中で最大の臓器なのだ。
その皮膚は『保護作用』『分泌作用』『知覚作用』『体温調節作用』『排泄作用』『脂肪貯蓄作用』という6つの働きを成している。さらに内臓や血液・内分泌とも密接な関係があり、様々な病気のサインが皮膚に現われることもある。それはデルマドロームと呼ばれ、1947年に米国人皮膚科医が提唱したもので、デルマ(皮膚)とシンドローム(症候群)を合わせた造語だ。
このように、古くから全身疾患と皮膚症状には関係がありそうだと推測されていた。そのため、皮膚症状は内臓疾患の診断などに役立つ可能性があると提唱されてきたのだ。
東邦大学医療センター佐倉病院皮膚科の樋口哲也教授に話を聞く。
「現在、皮膚は多くの臓器と緊密に関係していることがわかっています。デルマドロームは消化器疾患、血液疾患、内分泌疾患など、ほとんどの内臓疾患で出現する可能性があります。特に悪性腫瘍で出現するデルマドロームも複数あり、見落としてはならないサインです」
悪性腫瘍のサインが皮膚に現われるのは疾患細胞から産生されるTNFαやEGRといったサイトカインのせいと考えられている。その結果、表皮細胞が増殖し、皮膚が硬くなってガサガサになってしまう。ただし、高齢者に発生する黒色や黒褐色のイボが短期間で大量に出る場合はデルマドロームも考えられるが、通常は老化によるもので、気にする必要はない。