女性天皇に反対の安倍派が崩壊
かつて女性皇族に関する皇室典範の改正が俎上に載ったことはあるものの、最終的に結論が出ることはなかった。議論中止に深くかかわってきたのが、ほかならぬ安倍晋三氏だ。安倍氏は、天皇家は一貫して男系男子によって継承されてきたため「万世一系」であるべきだという考えを主張してきた。
2004年、当時首相だった小泉純一郎氏が女性・女系天皇を容認する姿勢を示すと、翌年には有識者会議が設置され、皇室典範改正案の法案化も着手されていた。しかし、2006年に紀子さまのご懐妊が明らかになると、風向きが変わる。
「小泉氏は皇室典範改正案の国会提出見送りを表明。当時官房長官を務めていた安倍氏は、小泉氏に“自民党の勉強会の議論をまず見守るべきだ”と慎重姿勢を強く進言したといいます」(別の全国紙政治部記者)
2011年、民主党政権時代。当時の宮内庁長官が、首相の野田佳彦氏に、皇室活動の維持が懸念されると説明したことを機に、女性皇族が結婚後も皇籍にとどまる「女性宮家」創設案と、結婚して皇籍を離れても皇室活動を続ける2案を併記した「論点整理」が発表された。しかし、同年12月、政権交代により安倍氏が首相に就任すると、女性宮家創設を白紙に戻したのだ。
「安倍氏が2022年に亡くなった後も、安倍派は自民党内の最大派閥でした。当然ながら安倍氏の遺志を継いでいるので、男系男子に固執し、女性・女系天皇は認めないという意見の議員が多いです」(前出・別の全国紙政治部記者)
ところがその安倍派が、空中分解の危機にある。政治資金パーティーをめぐり、裏金疑惑が勃発したのだ。疑惑の内容を全国紙社会部記者が解説する。
「安倍派は、政治資金パーティーで得た収入の一部を議員に還流しながら政治資金収支報告書に記載しない運用をしていた疑いで、東京地検特捜部の捜査を受けています。組織ぐるみで意図的に違法行為を行っていた可能性もあり、事態は重く見られている。裏金の総額は直近5年間で約5億円にのぼるとみられています」
裏金疑惑により、政権の要職に就いていた安倍派の「5人衆」といわれる有力者が、全員辞任するという異常事態となった。
「捜査の結果がどのようになるかわかりませんが、それでも安倍派に留まりたいという議員がどれほどいるかどうか……。自滅した形になりますが、安倍派は解体の危機にあります。形だけ残ったとしても、弱体化は免れないでしょう」(前出・政府関係者)
安倍派が崩壊すれば、岸田氏に近い議員が集まる岸田派が最大派閥となる。とはいえ、過去最低の支持率を記録している岸田氏が絶体絶命の状況にあることに変わりはない。
「支持率10%台の総理が、総裁選で勝てるはずがありません。岸田総理は、’24年春頃までに自民党を窮地から救うための策を打つ必要があります。
安倍派が総崩れしたいまの自民党ならば、これまで推し進めることが難しかった皇室制度改革を看板として掲げることができる。増税・減税といった経済対策も、外交も不得手である岸田内閣が“大逆転”するには、国民の大きな関心事であり、支持も得ている女性天皇実現をテーマとした総選挙に打って出るしかないのです」(前出・自民党関係者)