博物館や水族館、劇場に空港、駅など、利用者にはふだん足を踏み入れることが出来ない裏側を観察できるバックヤードツアーが各方面で開催され、人気を集めている。京成電鉄がこのたび期間限定ショップで販売した入場券は、廃止された駅の中へ入ることができるというイベントと、限定アイテムを手に入れられるファッションイベントを掛け合わせたものだった。ライターの小川裕夫氏が、アパレルという異業種とのコラボで博物館動物園駅の新たな魅力を発信する試みについてレポートする。
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京成電鉄が博物館動物園駅の開業90周年を記念して、2023年12月16日と17日の2日間限定でポップアップショップ「京成フリーク」をオープンさせた。
同ショップではアパレルの「FREAK’S STORE(フリークス ストア)」とコラボレーションしたTシャツ・スウェット・キャップ・アクリルスタンドの京成グッズが販売されたが、なかでも目玉商品になっていたのが、京成上野駅改札外コンコース特設ブースにて1500円で販売された「コラボ記念限定キーホルダー付き入場券」だ。この入場券を購入すると、その日限定で普段は立ち入ることができない博物館動物園駅へと入ることができる。そして、限定ショップ「京成フリーク」を訪れることができるというものだ。
人気の廃止駅をイベント活用
現在、使われていない博物館動物園駅は、もともと皇室の「世伝御料地」だった場所に立地している。そのため、皇室に相応しい品位のある駅舎が求められ、荘厳な外観デザインになった。そうした過去の経緯のほか、『週刊少年ジャンプ』で長らく連載されていた人気マンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(通称:こち亀)にも登場することなどから高い人気を誇っていた。だが、博物館動物園駅は1997年に休止、2004年に廃止された。
上野の山の地下に設けられた駅だったということもあり、その地形から大きな駅施設を造ることができず、ホームは4両分しか確保できなかった。そのため、京成の利用者が増えて電車が長編成化していくと、6両編成の普通電車も通過するという状態になっていた。
こうした状態で利用者が増えることはあり得ず、博物館動物園駅の利用者は低迷。1990年代になると、1日あたりの利用者は200人前後になっていた。
そして、そのまま廃止されるわけだが、廃止後も駅舎は残されたままになっていた。16、17日で販売された入場券は、購入者が博物館動物園駅の構内へ入場することができるという、一種の鉄道イベントでもあった。
博物館動物園駅は駅機能こそ失っているものの惜しむ声は多くあり、京成電鉄やNPOなどが利活用を模索していた。
「同駅は2018年に駅舎を改修しましたが、その前年には東京藝術大学と京成は連携・協力に関する包括協定書を締結しています。駅舎改修時、同協定に基づいて同学の美術学部長(当時)だった日比野克彦氏によるデザインを出入口扉に使用しました」と話すのは京成電鉄経営統括部広報・CSR担当者だ。