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【岸田首相襲撃事件】爆破の痕跡がある“モニュメント”を残すかどうかで地元で意見割れる 被告は黙秘続け「動機不明」のまま法廷へ

爆弾で穴があいたコンテナを今後どうするのか(時事通信フォト)

爆弾で穴があいたコンテナを今後どうするのか(時事通信フォト)

 2023年4月、衆議院補欠選挙の応援で和歌山市の漁港を訪れていた岸田文雄首相の近くに爆発物が投げ込まれた。前年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件から1年も経たず、再び日本のトップが白昼堂々狙われたことは大きな衝撃を与えた。

 逮捕された無職・木村隆二被告(24)は鑑定留置を経て、責任能力があると判断され2023年9月6日に岸田首相への殺人未遂など5つの罪で起訴されている。これは投げ込んだ手製のパイプ爆弾の解析に和歌山県警が執念を燃やした結果だった。

「木村被告は現在まで黙秘を続けています。そのため動機の解明が難しく、岸田首相への殺人未遂を立件できないとなると、火薬類取締法違反や、爆発物取締罰則違反などといった罪状でしか起訴できなくなるところでした。そこで警察は木村被告の爆弾を再現し、幾度となく実証を重ね、殺傷能力があることを証明し、8月に殺人未遂で追送検していました」

 事件現場となった漁港を訪れると、日常を取り戻しているように静かで「もう警察も来ないし、事件について口にする人は減ったよ」(地元住民)というが、事件の事後処理を巡って議論が起きているという。

 それは漁港にある古びた錆だらけの「白いコンテナ」を巡る問題だ。

 事件現場から60メートルほど離れた場所に置かれているコンテナの側面上部には木村被告が投げた手製爆弾の金属片がつき刺さり、縦3センチ・横6センチほどの穴があいた。このコンテナを今後どうするかで意見が割れているのだという。漁港に出入りする地元業者の男性が語る。

「コンテナとしては大きな問題もなく使えるようなので『このまま使う』という声がありますが、『事件の戒めとして使わずに残すべきだ』との意見もあがっている。モニュメントのように現場に保存しようという人が一定数いて、話がまとまらないんです」

被告の素顔を知る議員の証言に注目

 今後の裁判で明かされるのが、木村被告の動機だ。被告は2022年7月、年齢などを理由に参院選に立候補できなかったのは不当だとして、国に損害賠償を求めて神戸地裁に提訴している。選挙制度に強い不満を抱えていたことが窺えるが、近隣住民は「高校卒業後は引きこもりがちで、ほとんど姿を見かけなかった」と口を揃え、素顔を知る人物は限られる。12月、記者が木村被告の父を訪れると「話すことはない」と言葉少なだった。

 数少ない木村被告の素顔を知る人物としてクローズアップされたのが、自民党の大串正樹衆議院議員だ。前出の木村被告が提訴した訴訟の一審判決直前の2022年9月、地元の兵庫県川西市で行なわれた自民党市議の市政報告会に木村被告が出席。その際、同席していた大串衆議に被選挙権や議員報酬について質問を繰り返したという。大串衆議は事件直後のマスコミの取材にこう明かしている。

「木村容疑者と思われる人物は、被選挙権について熱心に話をしていた。現行制度の参議院選挙が30歳以上とされていることなどを疑問に思っていたようだ。また市議や国会議員の報酬などについても聞いていた。あのような報告会に若い人が参加するのは珍しい。彼であろうと記憶に残っている。20分ほど話をしたので、覚えている」

 この発言にSNSでは〈話したことをそこまで詳細に覚えているわけないだろ〉と指摘する者が現われるなど物議を醸した。これ以降、大串衆議は木村被告についての言及を避けている。

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