国内

【過信してはいけないがん検診】腫瘍マーカー、胸部X線、バリウム検査、便潜血などのデメリット

(写真/PIXTA)

早期発見のために重要な検査も、中には必要のないものも(写真/PIXTA)

 日本人の死亡原因の1位であり、早期発見のために検査の重要性が唱えられている「がん」。しかしその中にも根拠に乏しく、過信してはいけないメニューがある。都内在住のKさん(53才)が3年前の夏を振り返る。

「人間ドックを受けた際、オプションで『腫瘍マーカー検査』をできると聞いたので、50才を機に受けました。すると、食道がんという結果が出た。驚いて友人の医者に相談したら“風邪をひいてもがんと反応することがあるから、結果はあてにならない”と言われ、恐る恐る専門の病院で精密検査を受けてみると食道がんではなかったんです。だけどまさかクリニックの検査結果が正しくないとは……」

 新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんも、腫瘍マーカー検査は「がん検診としての意義はない」と言う。

「本来腫瘍マーカーは、すでにがんの治療をしている人が治療の効果や再発の有無を調べるために行うもの。がんになると血液や尿に含まれる特定のたんぱく質の値が上がるといわれていることを利用して、早期発見にも有用だと実施されていますが、実際には良性の前立腺肥大や慢性膵炎などで値が上がることもあり、多くの研究によって早期がんの発見には役立たないと結論が出ています」

 臓器の姿を精細に描写できるCT画像に、細胞の悪性度を描写できるPET画像を重ねて全身のがんを調べる「PET-CT検査」も、早期発見につながる可能性は低い。

「腫瘍マーカーと同様、すでにがんに罹患している人が転移の有無を調べる検査で、早期発見に役立つというエビデンスはありません。しかも微量の放射性物質を含む薬剤を体内に入れて画像を撮影するため、多少なりとも放射線被ばくがあるのも問題です。健康な人が受けるべき検査ではありません」(岡田さん)

 医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが続ける。

「アメリカ核医学会は“PET検査は健康な人のがん検診に使ってはいけない”と断言しています。放射線被ばくに加えて、がんではないのに『陽性』となることもあり、不必要な検査や治療につながる『過剰医療』を招きます」

 尿一滴で「線虫」がにおいをかぎわけ、がんの有無を判断するという「線虫がん検査」も室井さんは信頼度を疑問視している。

「線虫がん検査は登場したばかりで歴史が浅く、腫瘍マーカーやPET検査以上に根拠に乏しい。参考程度に受けるならともかく、過信は禁物です。そもそも人間ドックのオプションに組み込まれている検査は、科学的根拠が薄い」

 実際、がん検診にかかわる専門学会も2023年10月に「精度に懸念がある」として全国調査の開始を発表している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
創設メンバーで東大卒のなつぴなつ
【異色の高学歴グループ】東大卒アイドルなつぴなつ 初グラビア挑戦で「私、何やってるんだろう」の瞬間あった
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
フレルスフ大統領夫妻との歓迎式典に出席するため、スフバートル広場に到着された両陛下。民族衣装を着た子供たちから渡された花束を、笑顔で受け取られた(8日)
《戦後80年慰霊の旅》天皇皇后両陛下、7泊8日でモンゴルへ “こんどこそふたりで”…そんな願いが実を結ぶ 歓迎式典では元横綱が揃い踏み
女性セブン
WEST.中間淳太(37)に熱愛が発覚、お相手は“バスり”ダンスお姉さんだ
《デートはカーシェアで》“セレブキャラ”「WEST.」中間淳太と林祐衣の〈庶民派ゴルフデート〉の一部始終「コンビニでアイスコーヒー」
NEWSポストセブン
犯行の理由は「〈あいつウザい〉などのメッセージに腹を立てたから」だという
「凛みたいな女はいない。可愛くて仕方ないんだ…」事件3週間前に“両手ナイフ男”が吐露した被害者・伊藤凛さん(26)への“異常な執着心”《ガールズバー店員2人刺殺》
NEWSポストセブン
Aさんは和久井被告の他にも1億円以上の返金を求められていたと弁護側が証言
【驚愕のLINE文面】「結婚するっていうのは?」「うるせぇ、脳内下半身野郎」キャバ嬢に1600万円を貢いだ和久井被告(52)と25歳被害女性が交わしていた“とんでもない暴言”【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
遠野なぎこと愛猫の愁くん(インスタグラムより)
《寝室はリビングの奥に…》遠野なぎこが明かしていた「ソファでしか寝られない」「愛猫のためにカーテンを開ける生活」…関係者が明かした救急隊突入時の“愁くんの様子”
NEWSポストセブン
WEST.中間淳太(37)に熱愛が発覚、お相手は“バスり”ダンスお姉さんだ
《独特すぎるゴルフスイング写真》“愛すべきNo.1運動音痴”WEST.中間淳太のスイングに“ジャンボリお姉さん”林祐衣が思わず笑顔でスパルタ指導
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
「どうぞ!あなた嘘つきですね」法廷に響いた和久井被告(45)の“ブチギレ罵声”…「同じ目にあわせたい」メッタ刺しにされた25歳被害女性の“元夫”の言葉に示した「まさかの反応」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)が犯行の理由としている”メッセージの内容”とはどんなものだったのか──
「『包丁持ってこい、ぶっ殺してやる!』と…」山下市郎容疑者が見せたガールズバー店員・伊藤凛さんへの”激しい憤り“と、“バー出禁事件”「キレて暴れて女の子に暴言」【浜松市2人刺殺】
NEWSポストセブン