ライフ

【追悼】ハーブ研究家のベニシア・スタンリー・スミスさん 夫である写真家・梶山正さんが明かす、愛した自宅での最期

2012年5月、京都・大原の自宅の庭でハーブの手入れをするベニシアさん

2012年5月、京都・大原の自宅の庭でハーブの手入れをするベニシアさん

 ハーブ研究家のベニシア・スタンリー・スミスさんは、京都・大原にある自宅で、2023年6月21日、誤嚥性肺炎のため亡くなった。

 自宅で最期を看取った夫で写真家の梶山正さんは、「本当に静かに息を引き取りました。ベニシアが愛したこの家で最期を迎えることができてよかったと思います」と話す。

 大原に移り住んだのは1996年。それまで住んでいた家を立ち退くことになり、100軒以上もの物件を見て回った末にこの家と出合ったという。

「ぼくは一目見た瞬間に気に入りましたが、ベニシアは『ついに私が死ぬ場所を見つけた』と言ったんです。大げさだと思ったけど、その後のエッセイでもそう書いていますから。

 彼女はイギリス貴族に生まれて、子供の頃から自然の中のコテージで暮らすのが夢だと言っていたので、ここで暮らしてここで死にたいというのは、正直な気持ちだったと思います」(梶山さん・以下同)

 大原の築100年以上の古民家は、その理想にぴったりだと感じたのだろう。老朽化した家に手を入れ、庭にハーブを植えて料理や暮らしに取り入れた。ハーブ研究家として活動を始めたのもこの家からだ。

 2009年から始まったNHKの『猫のしっぽ カエルの手』シリーズは、自然と寄り添って暮らすベニシアさんの様子をつづり、たびたび再放送される人気番組となった。

 2015年(当時64才)、ベニシアさんは「目が見えにくい」と訴え始め、2018年になってPCA(後部皮質萎縮症)という神経変異疾患を患っていると診断された。これは、進行とともに視力が衰えて失明し、認知機能が低下することもある病だ。

「その頃、家政婦さんが辞めたため、もう自分がみるしかないと思いました。

 でも、外出先で『トイレに行きたい』と言われると、女子トイレの前までは連れていけても中までは入れない。視力と認知機能が低下しているベニシアは、用を足した後に出てこられないことがありました。そんなときは親切な人に助けられることが多く、感謝する毎日でした」

 病気が進行すると「施設のお世話になった方がいい」というケアマネジャーのアドバイスもあり、ベニシアさんは嫌がっていたが入所することに。だがその後、新型コロナにかかった後、肺炎になって入院することになり、そこで担当医に「家に連れて帰りなさい」と言われたという。

「ぼくが『仕事があるから』と言うと、『仕事なんか辞めたらいい』と強く諭されました。『あと2〜3か月の命』だと。ようやくその意味がわかり、在宅介護を決心。それから退院までの約1か月間、介護で困らないため“たんの吸引”や、おむつを替えるトレーニングを病院でさせてもらい、2022年の夏から在宅介護に切り替えました」

関連記事

トピックス

中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
「山健組組長がヒットマンに」「ケーキ片手に発砲」「ラーメン店店主銃撃」公判がまったく進まない“重大事件の現在”《山口組分裂抗争終結後に残された謎》
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
財務省の「隠された不祥事リスト」を入手(時事通信フォト)
《スクープ公開》財務省「隠された不祥事リスト」入手 過去1年の間にも警察から遺失物を詐取しようとした大阪税関職員、神戸税関の職員はアワビを“密漁”、500万円貸付け受け「利益供与」で処分
週刊ポスト
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン