芸能

競争戦略の専門家が語る『男はつらいよ』で最も印象的なマドンナ 「志津を演じた新珠三千代のプロの仕事」

経営学者の楠木健氏が『男はつらいよ』で最も印象的なマドンナを振り返る

経営学者の楠木健氏が『男はつらいよ』で最も印象的なマドンナを振り返る

 年末年始に家族で楽しむ作品として長く親しまれてきた映画『男はつらいよ』シリーズは、渥美清さんが演じた主人公・車寅次郎が出会った女性に惚れて振られる、というパターンの人情喜劇である。ロングセラー『ストーリーとしての経営戦略』で知られる経営学者の楠木健氏は、寅さんが惚れる「マドンナ」のなかで最も印象的だったのは第3作『フーテンの寅』(1970年)の旅館の女将・志津だという。楠木氏が、新珠三千代が演じた志津の魅力について語った。

 * * *
 容易に真似されないスタイルの確立は、経営においてもとても大事なことです。かつて渥美清さんはシリーズが始まった時に「“乗って”やっている」と語ったそうです。練り上げた芸風を作品に注ぎ込んだ結果、彼が唯一無二の存在となったのは周知の通りです。

『男はつらいよ』は、吉永小百合さんなど大女優を配した作品の人気も高いですが、私が最も印象的だったマドンナは、新珠三千代さん。

 登場シーンでは、美人ではあるけれど“ぬるん”とした表情で地味な演技に徹しています。しかし、映画が進むにつれ、みるみる美しくなり、終盤には観客誰もが寅さんの手に届かない女性なんだと実感させられてしまう。こんな演技ができる女優はそうはいません。本物のプロだけができる仕事です。

■第3作『男はつらいよ フーテンの寅』(1970年)
 旅館の女将・志津(新珠三千代)に恋心を抱いた寅は、番頭になって働いていた。志津のために志津の弟と芸者の恋も実らせた寅だったが、志津には意中の人がいると知らされる。

【プロフィール】
楠木建(くすのき・けん)/1964年生まれ、東京都出身。一橋ビジネススクール特任教授。専攻は競争戦略。経営とは一見無関係な書評、映画評から経営戦略論に落とし込む『戦略読書日記』(プレジデント社)など、著書多数。

※週刊ポスト2024年1月1・5日号

関連記事

トピックス

『激レアさんを連れてきた。』に出演するオードリー・若林正恭と弘中綾香アナウンサー
「絶対にネタ切れしない」「地上波に流せない人もいる」『激レアさんを連れてきた。』演出・舟橋政宏が明かす「番組を面白くする“唯一の心構え”」【連載・てれびのスキマ「テレビの冒険者たち」】
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
現場には規制線がはられ、物々しい雰囲気だった
《中野区・刃物切りつけ》「ウワーーーーー!!」「殺される、許して!」“ヒゲ面の上裸男”が女性に馬乗りで……近隣住民が目撃した“恐怖の一幕”
NEWSポストセブン
シンガポールの元人気俳優が性被害を与えたとして逮捕された(Instagram/画像はイメージです)
避妊具拒否、ビール持参で、体調不良の15歳少女を襲った…シンガポール元トップ俳優(35)に実刑判決、母親は「初めての相手は、本当に彼女を愛してくれる人であるべきだった」
NEWSポストセブン
「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ犯から殺人犯に》「生きてたら、こっちの主張もせんと」八田與一容疑者の祖父が明かしていた”事件当日の様子”「コロナ後遺症でうまく動けず…」
NEWSポストセブン
「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏
【改正風営法、施行へ】ホストクラブ、キャバクラなどナイトビジネス経営者に衝撃 新宿に拠点を持つ「歌舞伎町弁護士」が「風俗営業」のポイントを解説
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「本人にとって大事な時期だから…」中居正広氏の実兄が明かした“愛する弟との現在のやりとり”《フジテレビ問題で反撃》
NEWSポストセブン
長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督からのメッセージ(時事通信フォト)
《長嶋茂雄さんが89歳で逝去》20年に及んだ壮絶リハビリ生活、亡き妻との出会いの場で聖火ランナーを務め「最高の人生」に
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「兄として、あれが本当にあったことだとは思えない」中居正広氏の“捨て身の反撃”に実兄が抱く「想い」と、“雲隠れ状態”の中居氏を繋ぐ「家族の絆」
NEWSポストセブン
今年3月、日本支社を設立していたカニエ・ウェスト(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストが日本支社を設立していた》妻の“ほぼ丸出し”スペイン観光に地元住人が恐怖…来日時に“ギリギリ”を攻める可能性
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン