『80歳の壁』など数々のベストセラーを生み出す和田秀樹医師が、「58歳から元気になる方法」をテーマに、現役世代の悩みに答える。50代後半ともなると、職場や自治体で行う年に一度の健康診断などで「血圧」「コレステロール値」が「基準値を超えている」と指摘される人は多いはず。すぐに治療や対策を始めるべきなのか。和田医師は「数値だけで判断するのは無意味」と喝破する。
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健康診断などで「血圧が高い」とわかると、ほとんどの医師は次の3つを指導します。
「塩分摂取を控えましょう」「飲酒を控えましょう」「薬を飲みましょう」──医師にそう言われた人は多いのではないでしょうか。私自身、40代から血圧が200程度と高い状態でした。でも私は、現在に至るまで塩分はまったく控えていないし、お酒も飲んでいます。その理由は「血圧のために楽しみを我慢したくないから」です。
私は「血圧170」で調子が良い
薬については、現在は降圧剤を飲んでいます。きっかけは、50歳頃に受けた心臓ドックで「心肥大」を指摘されたことでした。
しかし、処方された数種類の降圧剤の服用を始めたところ、血圧が正常値まで下がる半面、頭がボーッとしてフラフラし、仕事や日常生活に支障が出てしまった。そこで私は薬の種類や量を自分で見直して、自分が調子いいと感じられる「170」くらいでコントロールするようにしています。
なぜ、医師である私がそのような判断をしているのか。
たとえば、「塩分摂取」に対する考え方について説明します。「塩分の摂り過ぎは健康に悪い」とする“健康常識”は長く喧伝されていますし、厚生労働省も日本高血圧学会も「日本人の塩分過多」を問題視しています。
厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると日本人の塩分摂取量は1日平均約10グラム。諸外国に比べて多いため、「塩分の過剰摂取が高血圧の原因の一つである」として、同省の「日本人の食事摂取基準2020年版」では、男性7.5グラム未満、女性6.5グラム未満を1日の摂取目標量としており、高血圧学会も6.0グラム未満と定めています。
日本人の塩分過多は食事内容によるものです。昭和50年代の半ばまで日本人の死因第1位を「脳卒中(脳血管疾患)」が占めたのは、ご飯に干物、納豆、漬物、味噌汁といったかつての典型的な日本食メニューに一因があるとされ、その特徴は、塩分が多い割にタンパク質が少ない点でした。