「駒澤大学一強」と言われる箱根駅伝第100回大会。他大学はどう食らいついていくのか──青山学院大学の原晋・監督(56)が、本番直前にもかかわらずインタビューに登場。他大の展開予想も大胆に交えながら、意気込みや戦略を語った!【前後編の前編。後編を読む】
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「駒澤大が強いのは間違いない。主力の4年・鈴木芽吹、3年・篠原倖太朗、2年・佐藤圭汰を含め、実業団バリバリの10000m27分台が4人もいる(12月1日時点)。ウチには27分台は1人もいませんし、ある意味“白旗モード”です。ただ、やってみなければ何が起こるかわからないのが学生駅伝です」
第100回の記念大会の絶対的な優勝の本命と見られているのは、2年連続の学生駅伝三冠に王手をかけている駒澤大。今季は学生三大駅伝の出雲駅伝、全日本大学駅伝のいずれも1区から首位を譲らない完全優勝を遂げ、箱根に向けても「一強」と予想する声が多い。
一方、原監督率いる青山学院大は箱根駅伝を初優勝した15年の91回大会から4連覇し、直近9大会で6回の優勝。安定した強さを見せてきた。今大会は記念すべき大会であると同時に、青山学院大にとっても、原監督にとっても節目となる大会なのだという。
「100回大会だから特別な思いがあるかというとそうではありません。さらにいうなら青山学院大は今年創立150周年で、私自身も青山学院大の監督に就任し20周年になりますが、チーム作りが変わるわけではない。
近年の学生駅伝は1区間でもミスをすれば優勝は難しい。とくに今季の駒澤大には1区から1分以上離れたら逆転は困難。1分以上の差が開けば、相手はプレッシャーがかからず、楽に走れます。創価大は3年前、10区で3分以上の差があった駒澤大に逆転優勝されましたが、ああいう展開は稀。先頭に立つと、前を走るテレビ中継車をペースメーカーに使え、風よけにもなる。気持ちよく走れますし、追いかけるのは簡単ではありません」
もちろん“打倒・駒澤大”を掲げているのは青山学院大だけではない。前回2位と躍進し、28年ぶりの頂点をねらう中央大、過去2年は上位に定着し、今季は出雲で4位、全日本で2位の國學院大は、青山学院大とともに駒澤大を追う。
「特に往路については、駒澤大と青山学院大に加え、中央大、國學院大、創価大、城西大を含めた6校の争いが面白くなるでしょう。駅伝は走り出したら、球技のように試合を止めて選手に指示を出すことはできない。結果を出すためには農作物と一緒で、しっかりと畑を耕したうえで、種を蒔き、水や肥料、光を与えながら地道に続けるしかない。戦術変更1つで局面をガラッと変えることなんてできないですからね」
いかに自律した選手を育てるか。それが勝敗を分けるという。
「就任8年目を迎えた藤原正和監督率いる中央大と就任15年目を迎えた前田康弘監督率いる國學院大は40代の青年監督のもと、ようやく指導者のカラーが出てきてチームが勢いづいている印象があります。私も結果が出るまでに8年くらいかかりましたからね」
(後編へ続く)
取材/上田千春
※週刊ポスト2024年1月1・5日号