2024年の箱根駅伝は記念すべき第100回大会。事前の予想では駒澤大学一強と言われているが、青山学院大学はその牙城を崩せるか? 名門・青学の原晋・監督(56)がレース展開を予想する。【前後編の後編。前編を読む】
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熾烈な展開が予想される箱根駅伝。“名将”と讃えられる原監督が名指しした注目選手がいる。
「創価大は5区の山上りで出雲、全日本で区間賞の3年・吉田響の出走が濃厚。彼は5区の前回大会区間記録(1時間10分4秒)を大きく上回る1時間8分台も狙えそうですし、4代目“山の神”になる可能性がある。2区には留学生もいますし、展開次第で往路は創価大が優勝しても不思議じゃない。
最多優勝の中央大にはスピードのある吉居大和・駿恭兄弟がいますが、今年は成績が振るっていないので特別警戒することはないかな。ただ総合力で見れば、やはり駒澤大に対抗できるのはウチだけだと思っています」
前回大会、青山学院大は山上りの5区(区間9位)、および山下りの6区(区間20位)で駒澤大に遅れを取ったことが響いた。
「平地では1区間で1分も2分も差がつかないですが、山上りと山下りでは区間賞から区間最下位の差が5分、場合によっては10分近くつくことも。リズムを掴めないと一気にブレーキがかかります。前回ウチは失敗しましたが、逆にそこを乗り切れば駒澤大とも勝負できるはず。ただ、駒澤大にも前回経験したスペシャリストがいるので大崩れは期待できそうにないですけどね(苦笑)」
青山学院大は前回、10区間中7区間で4年生が走り、上級生が抜けた穴は他大学よりも大きいといわれている。
「学生スポーツでは選手が入れ替わるのが常。プラスもあれば、マイナスもあります。今季もこれまで通り青学メソッドにそって、春はスピードを強化し、夏合宿では走り込み、質、量ともに昨年より上げてきました。部員44人の5000mの平均タイムは14分00秒で、10000mを含め平均タイムは軒並み過去最高。選手が入れ替わるなかでも成長を続けているのがウチの強さです」
青山学院大の新エースと評判なのは2年・黒田朝日。今季は急成長し、駅伝デビューとなった出雲2区で駒澤大のエース佐藤と区間賞を分け合い、全日本2区でも佐藤に8秒の差でくらいつき、2位と好走した。また、前回は4区で区間2位の走りを見せた3年・太田蒼生も健在だ。
「黒田と太田に加え、3年連続で箱根に出場している4年の佐藤一世がウチの3本柱です。黒田はトラックの持ちタイム以上にロードで強い青山学院大の新・駅伝男。彼らを前半から投入し、駒澤大に先行するのが難しくても、あわよくば30秒以内の差を保ちチャンスを窺いたい。秘策? そんなものはないし、これまで通り王道でやるだけ。ポイントはやはり山区間。そこをしっかりカバーできているか注目してください」
(了。前編から読む)
取材/上田千春
※週刊ポスト2024年1月1・5日号