石川県で1月1日に生じた大地震。能登地方では最大震度7を観測し、現地は相次ぎ余震が起きている。被害の大きかった能登半島北部の輪島市、珠洲市、穴水町などは多くの建物が倒壊し、人々は役所などで避難生活を続けている。
行政や各企業が水や食糧、ガソリンなどの支援物資を被災地に送るなか、現地を悩ませているのは「トイレの問題」だ。自宅で被災した穴水町に住む50代の女性が声を落とす。
「今一番困っているのは、トイレの衛生状況です。それぞれ家のトイレは詰まっているため、基本的に役場か病院で皆さん用を足すのですが、こちらも水が詰まって流れない。便が便器から溢れ、想像を絶する匂いになっています。男性のなかには路上や茂みなど外で用を足す人もいて、今はそちらの方が衛生的かもしれないと思うほどです」
実際にNEWSポストセブン取材班が見た輪島市沿岸の公共トイレでは、地震によりドアの鍵が歪んで壊れていた。ドアを開けると、大量の便と紙が流されないまま便器に放置され、利用できるような状況ではなかった。
災害に詳しいジャーナリストによると、これまでの大規模災害でも「トイレの問題」は繰り返されてきたという。
「今回のような大規模災害となると、普段使用している水洗トイレの多くは、断水、停電、排水設備や処理施設の損傷などにより、使用できなくなります。災害時は混乱もあり、水が流れないことに気づかずに用を足してしまうため、必ずと言っていいほどトイレのトラブルが起きるのです。不衛生なトイレを放置していると、菌やウイルスを伝播しやすい環境となり、感染症罹患のリスクも高まります」
2011年の東日本大震災でも、同様のトラブルが起きていた。『NHK WEB』によると、2011年の震災時、およそ800人が集まった避難所で、「透明の衣装ケース」に暗幕をつけたものが「トイレの代わり」として約3日間使用され続けたという。