学校の学級会で何か決めなければならないとき、何でも多数決で決めることにモヤモヤした体験をした人は多いだろう。なかには、いつまでも少数派の意見が無視され、絶望的な気持ちになっていた人もいるかもしれない。そんな人たちにとって、近年の多様性を重んじようという社会運動と、それを称賛する雰囲気は喜ばしいことだろう。ところが、その人が運動しやすい都合がよい多様性を主張する人たちが出現し、周囲が困惑している。ライターの宮添優氏が、多様性を認めて推奨する学習や働きかけがされている、主に学校で起きている問題についてレポートする。
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「多様」であることは良いことである、とする機運が年々高まっている。中学や高校においては、女子生徒の制服がスカートとズボン、どちらも選べるようになっていたり、いわゆる「LGBTQ」に対する理解を深めるべく、外部から講師を招くなどして授業も行われているようだ。だが、この”良いこと”をすすめる現場では、小さくない問題が頻発しているという。
「急にズボンが良いと言い出したので、最初はそういう年頃なのかと思い、深くは考えませんでした」
こう話すのは、娘が千葉県内の公立中学に通うパート従業員の笹原悦子さん(40代・仮名)。ちょうど中学2年の夏休み直前、娘が「制服をズボンに変えたい」と訴えてきたのだ。
「娘はちょっとぽっちゃりしているのを気にしていて、脚を出すのが嫌なのかな、思春期だからかな、と思い、すぐズボンを買いに行きました。夏休み中の登校日にはズボンを履いて登校し、とても暑そうにしていましたが、特に様子がおかしいというわけではなかったんです」(笹原さん)
ところが夏休み明け、娘は急に学校に行きたくないと言い出し、部屋に閉じこもってしまったのだという。
「初めて”何かが起きている”と感じ、色々と考えました。もしかしたら、ズボンを他の生徒に笑われたりしたのではないかとか、ズボンに履き替えるくらいでは足らないくらい、自分の性に違和感を持っているのではないかなど、思いつく限りのいろいろなコトを考えました」(笹原さん)
特別講師から男性の服装をさかんにすすめられた
笹原さんの娘は一週間ほど、頑なに口を閉じて登校を拒否するばかりだったが、心配して家にやってきた娘の同級生が教えてくれた話で、一体娘に何が起きているのか、初めて知った。
「LGBTQに関した授業で、外部からやってきた講師の女性から、娘は”あなたは性に違和感を持っている”とか”男性の格好をしたって良い”と何度もアドバイスを受けていたそうなんです。ズボンを履くように勧めたのもその講師でした。内気な娘は、講師に言われたことをハイハイと聞いてしまい、最後にはズボンをすすめられ、着用を拒否できなかったとお友達にも相談していました」(笹原さん)