【週刊ポスト連載・医心伝身】前号で内臓疾患のサインが皮膚に現われる例を紹介したが、逆に皮膚疾患が全身に悪影響を与えることもある。それが乾癬だ。皮膚が赤く肥厚し、剥がれ落ちる疾患だが、乾癬が心疾患の危険因子であるとの研究報告がある。他に慢性疾患の乾癬によって全身の炎症が惹起され、結果的に心血管疾患、内臓疾患、生活習慣病を起こす可能性も指摘されている。
国内の患者数が40~50万人と推計される乾癬患者は、年々増加傾向にあり、特に肥満気味の中高年男性の発症頻度が高い。ちなみに男性の発症数は女性の約2倍だ。一般的には男女とも20~40歳代に発症するケースが多く、高齢での発症もまれではない。具体的な乾癬の症状としては、体のあちこちに厚く盛り上がった赤い皮疹が出現する。
患者の約80%を占めるのが尋常性乾癬で、乾癬性関節炎や乾癬性紅皮症などのタイプもある。乾癬は症状がよくなったり、悪化したりを繰り返す慢性炎症性疾患だが、どのタイプも他人に感染することはない。
前号に引き続き、東邦大学医療センター佐倉病院皮膚科の樋口哲也教授に話を聞く。
「乾癬の発症には、サイトカインが関わっているとされています。皮膚に過剰な刺激などが加わると、TNFαなどのサイトカインが産生され、炎症反応が起こります。それがさらにIL-23、IL-17などのサイトカイン産生を促すため、皮膚細胞の増殖と炎症が次々に発症してしまうのです。結果、皮膚の新陳代謝サイクルが正常な細胞よりも短くなってしまい、特有の皮膚症状が起こると考えられています」
乾癬は皮膚の病気なので、命に関わるものではないと思われてきた。しかし、近年の研究では、心筋梗塞のリスクファクターでもあると報告されている。というのも乾癬を発症すると、皮膚のみならず、他の臓器や血管などに炎症が惹起され、全身に炎症が起こる。この全身炎症が糖尿病などを悪化させてしまい、結局のところ、動脈硬化や心筋梗塞の発症リスクとなってしまうのだ。