新教祖が現れないと、生徒も増えない
現人神のような教祖が現れる・現れないの問題ではなく、結局、4代教祖のなり手がおらず、後継指名もできないというのが現在のPL教団なのだ。教祖(リーダー)不在という状況によりひずみも生まれている。
「信者さんが亡くなっても、PL式の葬儀を認めず、仏教でいう戒名となる諡(おくりな)も信者に付与していない。葬儀は宗教団体で大きな柱となる大事な行事です。それを禁じているのだからもはや宗教団体の体をなしていません。近年、未亡人は聖地内の森林を伐採し、谷を産業廃棄物となる残土で埋めてお金にしている。こうした環境の変化によって生態系にも変化があったのか、ここ数年、大阪府富田林市の聖地内では猪が大量に発生するようになりました。現在の教団はこの野生の猪を捕まえて、食肉として販売している。商魂逞しいとは思いますが、これも信者数の激減によって教団が経済的に困窮していることの裏返しではないでしょうか」(前出・元教団教師)
PL学園野球部の廃部問題を発端とし、2014年からPL教団および学園の取材を続けてきた私は桑田会長に訊ねた。今後、4代教祖となる人物は本当に現れるのか、と。すると会長は苦笑しながら、こう話した。
「現れると思いますよ。過去にも2度ほど、教祖不在の時期があったと聞いています。すべては4代目の教祖様が決まってから動き出す。4代目が決まらないうちはこちらから動くことはできない。今は耐える時期だと思います。そして、4代目が決まり、復部が決まったら、OB会としても前のめりに動こうと思っています」
しかし、いくら野球部が復活を果たしたとしても、学園に生徒がいないのが現状だ。昨年度の入試では国公立コースの外部募集がとうとう「ゼロ」になり、理文専修コースも0.08倍という目も当てられない競争倍率であった。現在の学園生徒は熱心な信者の2世や3世しかいない。桑田氏が続ける。
「生徒数が増えない限り、難しい状況は続きますよね。現在の学園は教祖から御守り(=神霊・みたま)を拝受した人しか受験できない。ということは、新しい教祖様が現れない限り、学園を受験する生徒も増えないんですよね」
結局、学園生徒数の減少も、教祖不在の影響が大きいのである。
「懇親会」と名称が変更となった今年は、片岡篤史氏(中日一軍ヘッドコーチ、元阪神ほか)や宮本慎也氏(元東京ヤクルト)ら元プロ野球選手も顔を見せていたものの、元監督の中村順司氏らの姿はなく、参加者は63人と例年より少なかった。
2016年に野球部が事実上の廃部となって8年近い時間が過ぎ、学園の生徒数も、教団の信者数も風前の灯火となっているPLの窮状を表すかのようだった。
■取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)