中村雅俊(72才)は、俳優と歌手の“二刀流”で昭和、平成、令和にわたり第一線を走り続ける希有な存在だ。2024年は、4月に俳優、7月に歌手デビュー50周年となる節目の年。人生の転機となった作品や、これからについて聞いた──。【全3回の第1回】
「出版社のかたから直々に『売れ行きが好調です』と手紙をいただきました。うれしくて、俺も久々に見てみましたよ。24才の自分? いいとは言わないけれど、若さゆえの勢いはありましたね」と話す中村雅俊。穏やかな笑顔の中に、当時のいたずらっぽい表情がのぞいている。
“青春ドラマの金字塔”として一世を風靡した『俺たちの旅』が、『昭和傑作テレビドラマDVDコレクション』(アシェット・コレクションズ・ジャパン)シリーズの第1弾として刊行中。創刊号が一時売り切れるなど、いま再び話題を集めている。
「昭和ならではの人と人とのつながりや町並みが懐かしい」「ロケ地巡りをした青春時代が蘇った」など、ファンからの熱い感想が多数寄せられているという。冒頭の中村の発言は、その反響を受けてのものだ。
「放映当時は圧倒的に女性ファンが多かったはずなんですが、近年は“俺たちの旅大好きおじさん”に会うことの方が多い(笑い)。DVDの発売以降、さらに反応がすごくてね。このドラマをこよなく愛してくれている人がこれほど多くいるという事実を、改めて実感しています」(中村・以下同)
『俺たちの旅』は、三流大学の4年生で、就職活動もせずアルバイトに明け暮れるカースケ(中村)と、生真面目なオメダ(田中健)、カースケの先輩のグズ六(秋野太作)という3人のモラトリアム的日常を描いた群像劇。当初は半年の放映予定だったが、高視聴率で1年に延びたという大ヒット作だ。
「当時は大学生が主人公のドラマは当たった例がなかったそうですから、すごいチャレンジだったのだと思います。
恋愛や友情、人生、家族といった普遍のテーマに真っ向からぶつかって、時には結論が出たり、出なかったり……。そんな若者のリアルな姿に共鳴する人もいれば、『冗談じゃない!』と反発する人もいて、さまざまな人からさまざまな反応がありました」
等身大の若者を描くという手法も、1975年当時のドラマでは新鮮だった。