昨年11月、創価学会の池田大作・名誉会長が世を去った。巨大宗教組織を育て上げた池田氏が不在となった創価学会はどこへ向かうのか。注目される、「後継者」の存在は──。宗教学者の島田裕巳氏と『宗教問題』編集長の小川寛大氏が語り合った。【前後編の前編】
小川:早速影響が現われ始めていますね。創価学会が支持母体の公明党は、国際共同開発した防衛装備品の第三国輸出について以前は容認する立場を示していましたが、昨年12月頃から慎重な姿勢に急転しました。
島田:ここ10数年は表舞台に姿を見せていなかったとはいえ、公明党の創設者である池田氏は組織的にも精神的にも支柱であり続けてきました。池田氏の死によって、大きな方針の決定に混乱が生じているのではないか。
小川:腹の内はわかりませんが、確かに池田氏は対外的には平和の使者で憲法改正に反対の立場でしたね。現在の公明党内には、中国の脅威を感じる「現実派」と昔ながらの「平和路線派」がいます。後者が「池田先生が掲げた平和の党の遺志を引き継ぐ」と声を大きくしているという話もある。だから慎重論に転じたのかもしれません。
家族葬に参列した女性部長
島田:そうした混乱もあってか、今後、創価学会は分裂に追い込まれると報じているメディアもありますね。ただ、私はそうは思いません。新宗教の分裂は、カリスマ的な支部長が支部ごと率いて分派するケースが多いですが、創価学会は支部の力が弱く、力のある支部長も見当たりません。
小川:私も同じ意見です。もともと池田氏自身がナンバー2を嫌い、後継者になり得る人材を潰してきたとも言われます。
島田:たとえば天理教の場合、各教会は独立採算が原則のため分裂があり得る。でも創価学会は聖教新聞の購読料や“財務”と呼ばれるお布施はすべて本部に入ります。各支部に財源がないことも組織が分裂しない要因です。
小川:ただし、分裂はしなくとも縮小は避けられません。ただでさえ近年の創価学会は、会員の減少と高齢化が進んでいましたが、そんななか池田氏が亡くなった。彼の死を悼んでいる学会員の数は非常に多い。組織の縮小がさらに加速することは間違いないでしょう。
島田:「ポスト池田大作」についてはどう考えていますか。池田氏の長男・博正氏(主任副会長)が担がれるのでは、との報道もありましたが、創価学会は世襲ではありません。博正氏は非常に真面目な印象ですが、ポスト池田にはなり得ないと思っています。