がんに次いで日本人に多い死因とされる「血管死」。突然訪れ、なすすべもなく命を奪って行く恐ろしい病気だが、知識と経験を併せ持ち、寄り添ってくれる医師のもとで治療を受ければ助かる見込みは大きく上がる。ジャーナリスト・鳥集徹氏と『女性セブン』取材班が調べた全国の心臓と血管の名医を一挙公開する。
心臓と血管の病気の中で、特に専門的な治療の対象となる病気は大きく「虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)」「心臓弁膜症」「大血管疾患」の3つに分かれる。前編では「虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)」「心臓弁膜症」の治療について紹介したが、後編では「大血管疾患」の治療について、そして“病院選び”について解説する。【前後編の後編。前編を読む】
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3つ目の「大血管疾患」のほとんどは左心室から出る最も太い血管である「大動脈」に関する疾患だ。大動脈は心臓から上向きに出て弓状にしなった後、下半身に向かって伸びていき、下腹部で二股に分かれ、全身に新鮮な血液を届ける、まさに「幹」となる血管といえる。その大動脈の一部がこぶ状に膨らんでできるのが「大動脈瘤」であり、破裂した場合を「大動脈瘤破裂」と言う。また、大動脈の内側の血管壁が傷つき、裂けてしまう場合を「大動脈解離」と言う。
横隔膜から上を「胸部」、下を「腹部」と呼ぶが、特に胸部大動脈瘤破裂、胸部大動脈解離は心臓に近いぶん死亡リスクが高く、手術も難しい。破裂リスクのある大動脈瘤が見つかった場合や、大動脈瘤破裂や大動脈解離で救急搬送された場合には、胸や腹部を開いて大動脈の一部を切り取り、人工血管に置き換える手術が行われている。
ただ、大血管疾患でも、心筋梗塞・弁膜症と同様に、カテーテル治療が発達した。「大動脈瘤ステントグラフト内挿術」だ。対象は破裂リスクのある大動脈瘤。足の付け根などから大動脈内にカテーテルを挿入してこぶのある部分で人工の筒を開き、内側から血管を補強する。
この治療にいち早く取り組んできた心臓血管外科医のひとり、総合南東北病院(福島県郡山市)成人心臓血管外科長の緑川博文医師が話す。
「私が医師になったばかりの頃は、70才以上で心臓大血管の手術をするなんて考えられませんでした。いまでも人工血管による開胸開腹手術はある程度のリスクがあります。でも、ステントグラフトならかなり高齢のかたでも治療でき、次の日には歩けてご飯を食べられます。
そうした治療と、ベッドで1週間過ごし、入院も1か月必要な手術とどちらを選びたいかと言ったら、患者さんは当然、負担が軽くすみ、早い方がいい。だからわれわれも、そのニーズに応えなくてはいけないと思っています」