一年の計が元旦にあるならば、“一日の計”は朝食にあるだろう。食べるか食べないか、食べるなら何をどう食べるのか―脳、自律神経、婦人科、血圧、睡眠、精神科など各分野の名医たちの朝食が丸わかり!
目次
- 監修・取材
- 名医が必ず朝食をとる理由。マストで摂るべき栄養素
- 食べるタイミングはいつが良いか?
- おすすめの簡単朝ごはんメニュー。毎朝食べることが重要
- どの名医も朝食で摂っている最強の栄養素は?食べ方にも注意
- 血圧が気になるときはカリウムを多く含む食品を
- 食欲がわかない時の朝ご飯。満足感を重視する名医も
-
名医たちが本当に食べている「最強の朝食」リスト
- 伊賀瀬道也先生(愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長)
- 市原由美江先生(内科・糖尿病専門医)
- 今井一彰先生(みらいクリニック院長)
- 今津嘉宏先生(芝大門いまづクリニック院長)
- 加藤俊徳先生(医学博士、「脳の学校」代表)
- 加藤庸子先生(藤田医科大学ばんたね病院脳神経外科教授)
- 鎌田實先生(医師、作家)
- 小林弘幸先生(順天堂大学医学部教授)
- 宋美玄先生(産婦人科医)
- 高尾美穂先生(産婦人科医、医学博士、婦人科スポーツドクター)
- 坪田聡先生(睡眠専門医、雨晴クリニック院長)
- 日比野佐和子先生(Y’sサイエンスクリニック広尾院長)
- 松村圭子先生(成城松村クリニック院長)
- 和田秀樹先生(精神科医)
- 渡辺尚彦先生(医学博士、高血圧専門医)
監修・取材
・伊賀瀬道也先生(愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長)
・市原由美江先生(内科・糖尿病専門医)
・今井一彰先生(みらいクリニック院長)
・鎌田實先生(医師、作家)
・今津嘉宏先生(芝大門いまづクリニック院長)
・加藤俊徳先生(医学博士、「脳の学校」代表)
・加藤庸子先生(藤田医科大学ばんたね病院脳神経外科教授)
・小林弘幸先生(順天堂大学医学部教授)
・宋美玄先生(産婦人科医)
・高尾美穂先生(産婦人科医、医学博士、婦人科スポーツドクター)
・坪田聡先生(睡眠専門医、雨晴クリニック院長)
・日比野佐和子先生(Y’sサイエンスクリニック広尾院長)
・松村圭子先生(成城松村クリニック院長)
・和田秀樹先生(精神科医)
・渡辺尚彦先生(医学博士、高血圧専門医)
名医が必ず朝食をとる理由。マストで摂るべき栄養素
ダイエットや健康のための習慣を考える際、「朝食を食べるか、食べないか」は永遠のテーマ。しかし、本特集に登場する名医のほとんどが「朝食はとる」と回答した。
一日の中で、朝食に特に重きを置いていると言うのは、愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也さんだ。
「朝に最もカロリーを摂取するというのは子供の頃からの習慣です。朝から昼にかけていちばん働けるように速やかにエネルギーになる炭水化物は必ず摂ります。お米派なので、納豆をつけて、野菜たっぷりのサラダに、ベーコンやソーセージ、卵料理と牛乳もほぼ毎日。これはたんぱく質をしっかり摂るためです。たんぱく質は朝に摂ることで最も効率的に筋肉が作られるので、アンチエイジングに効果的ですよ」
『長生き朝ごはん-病気知らずの名医が食べている-』の著者である、芝大門いまづクリニック院長の今津嘉宏さんは、朝食べたものは確実に消費されるため、太る心配もないと太鼓判を押す。
「がっつり食べても体を動かすためにエネルギーとして燃えてくれるので、筋肉にもなるし頭の回転もよくなります。必ず温かいスープを食べるようにして、食物繊維がしっかり摂れるよう具材は海藻類やきのこ類が多いですね。いまの時期は体をより温められるよう、長ねぎやしょうがも取り入れます。たんぱく質も意識してぼくは朝からしっかり肉を食べるけど、お豆腐や卵でも充分。炭水化物も少量ですが、食べるようにしています」(今津さん)
精神科医の和田秀樹さんも続ける。
「朝食を抜かないというのは大前提です。年をとればとるほど栄養不足や低血糖のダメージは大きくなり、認知症のリスクも高まる。たんぱく質と炭水化物はマストにし、栄養を充分摂ることです」
食べるタイミングはいつが良いか?
少量ずつでも多くの栄養素を摂ることを実践する名医は多い。藤田医科大学ばんたね病院脳神経外科教授の加藤庸子さんが言う。
「大事なのはバランスのよい食事です。牛乳はたんぱく質も摂れますし、整腸作用もある。冬は体を冷やさないよう温めて飲むことが多いです。野菜サラダに欠かせないのは抗酸化作用のあるにんじん。βカロテンが豊富な野菜はおすすめ。食欲がないときはバナナを食べます。口当たりもよく、腸内環境を整えてくれる。あまりお腹が空いていなくても、朝食は一日の活力のもとなので必ず食べます。朝8時くらいに活動ホルモンがピークに達するので、できればその前に食べられるよう6~7時の間くらいにとるようにしています」
おすすめの簡単朝ごはんメニュー。毎朝食べることが重要
朝食を欠かしたくないからこそ、料理の必要のないもので決まったメニューにしていると言うのは、順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんだ。
「メニューは毎朝決まっていて、ヨーグルトにバナナ、トーストにバターとはちみつをかけて、あとはゆで卵とコーヒー。これが数年来の定番です。栄養バランスを考えながらも、ほぼできているもので調理不要なので10分もあればできちゃうのがいい。甘いものが好きなので、砂糖よりもカロリーが低くオリゴ糖の整腸効果も期待できるはちみつを摂っています。運動を日課にしていることもあり、たんぱく質も重視。また咀嚼は多い方がいいので、よく噛んでゆっくり食べます」
小林さんの言うように忙しい朝にできることは限られる。婦人科医で成城松村クリニック院長の松村圭子さんがすすめるのは「ずぼら飯」だ。
「みそ汁はマストで食べますが、フリーズドライとか、作ったとしてもチューブのみそを使ってしまったり。必ず一品つける野菜料理も前日の夜に晩酌した際の残りものや、冷凍野菜なんかもよく使ってしまう。たんぱく質も摂りたいから納豆や電子レンジで作る目玉焼きなど、とにかく簡単ですぐにできるもので栄養バランスの整ったものを毎朝食べることが大切なんです」
どの名医も朝食で摂っている最強の栄養素は?食べ方にも注意
朝食重視の理由も名医それぞれだが、共通項はたんぱく質摂取。睡眠専門医で雨晴クリニック院長の坪田聡さんが解説する。
「当直で病院にいる日もありますが、家で朝食を食べるときは納豆を食べるようにしています。加齢とともに筋肉からたんぱく質が溶けて、サルコペニアやフレイルになりやすくなるのでたんぱく質は非常に大切です」
医師で作家の鎌田實さんも「朝食でいちばん意識しているのがたんぱく質」と続ける。「日本人の高齢者の最大の欠点はたんぱく質が不足していること。朝、たんぱく質を摂らないと筋肉の貯金はできません。中年以降の女性の筋肉減少は顕著で、毎年1・2%くらい減るといわれている。その大きな原因がたんぱく質不足です。ゆで卵をウーロン茶につけておくウーロン卵や、缶詰のオイルサーディン、かにかまなんかは常備しておくと便利です。女性におすすめなのは高野豆腐。レジスタントタンパクという成分がコレステロール値や血糖値も下げてくれます」
朝食時に摂るたんぱく質が夜にも効果を発揮すると言うのは、産婦人科専門医で医学博士、イーク表参道副院長の高尾美穂さん。
「たんぱく質に含まれるアミノ酸の一種であるトリプトファンが日中にセロトニンになり、睡眠時にメラトニンに変化して、良質な睡眠につながると考えられています」
栄養バランスのとれたボリュームある朝食をルーティンとする名医が多い中、“食べ方”には注意したい。
内科医・皮膚科医でY’sサイエンスクリニック広尾統括院長の日比野佐和子さんが言う。
「気をつけているのは野菜や卵などを先に食べること。血糖値上昇や、糖化・酸化ストレスを抑えるために糖質は後にするのが鉄則です」
自身も糖尿病罹患者である内科医で糖尿病専門医の市原由美江さんも、血糖値が上がらない工夫をしている。
「玄米はGI値が低く、糸寒天には食物繊維が豊富に含まれており、どちらも血糖値の上昇をゆるやかにしてくれる。納豆も良質なたんぱく質を摂りながら血糖値上昇抑制効果があるため必ず食べますね。また、時間をかけて食べることも、血糖値上昇を抑えるため意識しています」
血圧が気になるときはカリウムを多く含む食品を
“ミスター血圧”の異名を持つ高血圧専門医の渡辺尚彦さんは、血圧コントロールに重きを置いている。
「朝はバナナと豆乳、もしくはご飯と納豆を食べています。豆乳には血管を広げる作用があって血圧コントロールに効果がある」(渡辺さん・以下同)
バナナと納豆に共通するのはカリウムが豊富なこと。高血圧予防にとってカリウムの持つ作用は大きい。
「カリウムは血管を拡張して血圧を下げる効果があるほか、ナトリウム(塩分)を排出する働きを持つ。昼や夜は人と食事をする機会が多いので、減塩するなら朝がおすすめ。納豆にもタレは入れません。野菜も食べた方がいいのでしょうが朝はどうしても忙しいので、1週間単位でしっかり摂れればいいと、金曜日のお昼に野菜と海藻をたくさん食べると決めています。海藻も塩分を排出してくれるので、積極的に摂りたい食材です」
減塩を心がける名医は多い。高尾さんは「薄味が好みなので、納豆のタレも使わずごま油などで風味を出します」と言い、坪田さんも「サラダを食べるときもしょうゆやマヨネーズなどは使わず、野菜の味を楽しみます」と、調味料は最低限にするのが名医たちのルールのようだ。
食欲がわかない時の朝ご飯。満足感を重視する名医も
年齢を重ねると食欲も控え目になり実際は何も食べたくない朝もあるだろう。それならば量を調整してみよう。
「朝起きてまずお腹が空いているかどうか確かめます。お腹が空いていなければ無理に固形物は食べず、豆乳とトマトジュースを半量ずつで割ったものを飲むようにしています。空腹なら、炊きたてのご飯と納豆、フリーズドライのおみそ汁というメニューが多いです」(高尾さん)
産婦人科医の宋美玄さんもカルシウム摂取を重視した軽めの朝食が定番だ。
「女性は加齢とともに骨粗しょう症になりやすく、更年期のホルモンを安定させるためにもカルシウムは特に大事な栄養素。昼や夜に比べ、朝食の方が乳製品のメニューが断然合うので、牛乳やヨーグルトを取り入れるようにしています」(宋さん)
栄養よりも自身の満足感を重要視していると言うのは脳内科医の加藤俊徳さん。
「バナナと季節の果物、ナッツ類少しとパン、カフェイン入りの飲み物、そしてマルチビタミンサプリメントと極めて粗食です。大事なのはその日の自分に必要なものを選べるようにしておくこと。栄養学上はいろいろ不足しているかもしれないけど、脳科学的見地から幸せになれるメニューにしています」
プロテインのみという潔い選択も。口腔環境を改善する「あいうべ体操」の考案者で、みらいクリニック院長の今井一彰さんが言う。
「起床後のルーティンとして高強度のエクササイズをしていることもあり、平日はプロテインのみです。朝の仕事に効率よく集中するには食事の時間がもったいないし、空腹状態は長寿遺伝子ともいわれるサーチュイン遺伝子やオートファジーを活性化します」
結局のところ、自分の体に合うもの、そして生活スタイルに合うものを無理なく食べることが自分自身にとっての最強の朝食となる。さぁ、明日の朝は何を食べる?
※女性セブン2024年1月1日号