宮崎駿や福澤克雄も情報を隠した
『新空港占拠』や『VIVANT』のような「あえて情報を隠して期待感を高める」というPR手法は、このところ他の作品でもときどき見られます。
『VIVANT』と同じ昨夏に放送された『何曜日に生まれたの』(ABC・テレビ朝日系)も、しばらくの間、主に「脚本・野島伸司、主演・飯豊まりえ」以外の情報が伏せられ、どんなジャンルのどんな物語なのかすらわからないというPR手法が採用されました。
さらに「あえて情報を隠して期待感を高める」という意味では、それ以上の徹底ぶりだったのが、宮崎駿監督と鈴木敏夫プロデューサーの映画『君たちはどう生きるか』。情報を徹底して隠したことで、公開直後はネット上にさまざまな声が飛び交いました。
『VIVANT』の福澤克雄監督も含めて、大物クリエイターたちが、「余計な先入観を与えず、ミスリードを避けたい」「より物語に没頭してもらいやすい」「大きいインパクトを与えられる」などの理由から情報を隠すという手法を選んでいることに気づかされます。
ただ、『VIVANT』や『君たちはどう生きるか』ほど情報を隠す手法は、「タイム・パフォーマンスを考えてレビューやネタバレを読んでから見るかどうかを決める」という人も多い現在、ハイリスクであることは間違いありません。
その意味で放送直前に情報解禁した『新空港占拠』のPR手法も堅実な結果を得る上で理解できるところが大きいのです。ただそれでも、「発表から放送開始1週間前まで、あえて情報を隠したことが期待感につながったのか」の検証は局内で行われるでしょう。
はたしてこの選択はベストだったのか。それとも、『VIVANT』や『君たちはどう生きるか』のように開始まで隠しておいたほうがよかったのか。日本テレビに限らず、今後のPR手法に多少なりとも影響を与えるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。