新年になって連続ドラマが相次いでスタート。出演俳優が番組に出演するなどしてPRを行っているが、意外なPR戦略をとったのは櫻井翔主演ドラマの『新空港占拠』(日本テレビ系)。その狙いについてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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13日夜、ドラマ『新空港占拠』(日本テレビ系)がスタートします。
同作はちょうど1年前に放送された『大病院占拠』のシリーズ第2弾であり、主人公の武蔵三郎(櫻井翔)が、面で顔を隠した武装集団に占拠された場所で、人質を救うために立ち上がるタイムリミットバトルサスペンス。前回は“大病院”でしたが、今回は“新空港”が舞台になることが明かされています。
ただ、同作は最初に発表された昨年11月24日から放送1週間前の今年1月6日まで、『×××占拠』というタイトルが明かされていました。つまり、第1話の放送直前まで「どこが占拠されるのか」の場所を“×××”という形で隠していたのです。
「あえて情報を隠しながら直前で公開する」というPR戦略には、どんな意図と背景があるのでしょうか。
情報を隠して期待感を高めたい
制作・放送が発表されたとき、櫻井さんはタイトルと占拠場所のヒントとして、「個人的には結構好きな場所で、どちらかというとワクワクして、楽しみが膨らんでいくような場所」「『大病院占拠』より事件のスケールも大きくなっているので、新たな舞台も楽しみにしていただけたら」などとコメントしていました。
その後も、“占拠の舞台となる施設にかかわるキャスト”を公開したり、占拠場所や武装集団をほぼ全面モザイクで隠した仮ビジュアルを期間限定で掲出したり、龍の面をかぶった武装集団リーダーの姿を公開したり……情報を小出しにしながら期待感をあおるような形でPRは進められ、放送1週間前に占拠される場所が“新空港”であることが明かされました。
「あえて情報を隠して期待感を高める」というPRで思い起こされるのが昨夏のヒット作『VIVANT』(TBS系)。同作は一部キャストと海外ロケ以外の情報をほぼ隠し、どんなキャラクターのどんな物語かすらわからない状態で第1話が放送され、その後も序盤は“VIVANT”というタイトルの謎を明かさぬまま物語を進めていきました。同作の成功はいくつかの要素が考えられるものの、「あえて情報を隠して期待感を高める」というPRも、その1つとみなされています。
その点、今冬の『新空港占拠』は『VIVANT』ほど情報隠しを長引かせず、第1話の放送前に情報を解禁しました。これは「それぞれの制作スタッフ、引いては日本テレビとTBSの考え方が違う」ということでしょう。TBSは『VIVANT』という勝負をかけた大作で思い切って序盤まで隠すというPR手法を取った一方、日本テレビは「隠す」ことの効果を狙いつつもリスクを避けて放送前に解禁するPR手法を選んだように見えます。
言わばTBSは大胆で大きなPR手法を採り、日本テレビは堅実で小さなPR手法を積み重ねたということ。実際、前作の『大病院占拠』も、「俳優に色違いの鬼の仮面をかぶせて正体を当ててもらう」という仕掛けがあったほか、「主人公に『ウソだろ?』というお約束のセリフを作る」「軽めのアクションシーンやCGを織り交ぜる」など若年層の反応を狙った小さな手法を積み重ねるという制作スタンスが見られました。
決してどちらがいいというわけではありませんが、すべての年齢層や世界の人々を狙って一か八かの大きな手法を取った『VIVANT』とは異なるスタンスなのでしょう。