格差は解消した方がよいと、誰でも思うことだろう。だが、それが本当に「格差」なのかよく検討されないまま、騒がれることを避けるために慌てて対応しても、かえって混乱が広がるばかりだ。ライターの宮添優氏が、ジェンダー・ギャップ解消という名の下に、よく分からない対応で子供たちが振り回されている現実についてレポートする。
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この数年で、あらゆる場所で「ジェンダー・ギャップ(男女の違いによる格差)」を無くそうという取り組みを見聞きする機会が増えた。世界経済フォーラムが公表した「ジェンダー・ギャップ2022」によれば、日本における男女格差は先進国の中では最低レベルであり、中国や韓国、そしてASEAN諸国よりも低く、特に政治参画や経済参画の分野で、大きく遅れをとっているとされる。
教育の現場においても、これまで長く男子、女子の順にされてきた「クラス順」が混合になったり、ある私立学校では、女子を先にしてみたりなど、これが格差であるかどうかは別にして、試行錯誤の取り組みがなされているようだ。関東地方在住の公立中学教諭・貞本勇輝さん(40代)がその苦労を吐露する。
「保護者からの指摘を受け、決勝戦の試合の男女の順を入れ替えました。男女格差があって良いとは、今の現代に誰も思っていないでしょう。でもこの決定は逆に、子供たちにとってショックではなかったかと今もモヤモヤが残ります」(貞本さん)
なぜ女子が先で男子が後なのでしょうか
貞本さんが顧問を務めるのは、公立中学校の女子バスケットボール部。地域では何度も優勝経験のある強豪校で、昨年行われたある大会でも順当に決勝戦まで勝ち進んだ。しかしその大会前、チーム内の一部の保護者から、試合スケジュールについて問い合わせがあったという。
「女子の決勝は午前に、男子の決勝は午後に行う予定でしたが、なぜ女子が先で男子が後なのかと。ハッキリと仰ってはいないものの、ニュアンスとしては、なぜ大トリは男子なのか、というようなニュアンスでした。運営の我々も、昔からこう言うものだとしか思っていませんでしたので、慌てたというのは事実です」(貞本さん)
それは、クレームというほど強烈なものではなかったが、先述したような「世の中の流れ」を汲み取り、貞本さんを含めた大会運営メンバーは、大会を通じて「男子が先、女子が後」の試合スケジュールを組んだという。