ライフ

「ジェンダー・ギャップ解消」ただ男女順を入れ替えればいいわけではない

2021年実施の東京五輪閉会式では男女マラソンの表彰式が場内の真ん中で開かれた。男女一緒の実施は史上初。女子マラソン表彰式のあいだ、男子マラソンメダリストが脇で待機している(EPA=時事)

2021年実施の東京五輪閉会式では男女マラソンの表彰式が場内の真ん中で開かれた。男女一緒の実施は史上初。女子マラソン表彰式のあいだ、男子マラソンメダリストが脇で待機している(EPA=時事)

 格差は解消した方がよいと、誰でも思うことだろう。だが、それが本当に「格差」なのかよく検討されないまま、騒がれることを避けるために慌てて対応しても、かえって混乱が広がるばかりだ。ライターの宮添優氏が、ジェンダー・ギャップ解消という名の下に、よく分からない対応で子供たちが振り回されている現実についてレポートする。

 * * *
 この数年で、あらゆる場所で「ジェンダー・ギャップ(男女の違いによる格差)」を無くそうという取り組みを見聞きする機会が増えた。世界経済フォーラムが公表した「ジェンダー・ギャップ2022」によれば、日本における男女格差は先進国の中では最低レベルであり、中国や韓国、そしてASEAN諸国よりも低く、特に政治参画や経済参画の分野で、大きく遅れをとっているとされる。

 教育の現場においても、これまで長く男子、女子の順にされてきた「クラス順」が混合になったり、ある私立学校では、女子を先にしてみたりなど、これが格差であるかどうかは別にして、試行錯誤の取り組みがなされているようだ。関東地方在住の公立中学教諭・貞本勇輝さん(40代)がその苦労を吐露する。

「保護者からの指摘を受け、決勝戦の試合の男女の順を入れ替えました。男女格差があって良いとは、今の現代に誰も思っていないでしょう。でもこの決定は逆に、子供たちにとってショックではなかったかと今もモヤモヤが残ります」(貞本さん)

なぜ女子が先で男子が後なのでしょうか

 貞本さんが顧問を務めるのは、公立中学校の女子バスケットボール部。地域では何度も優勝経験のある強豪校で、昨年行われたある大会でも順当に決勝戦まで勝ち進んだ。しかしその大会前、チーム内の一部の保護者から、試合スケジュールについて問い合わせがあったという。

「女子の決勝は午前に、男子の決勝は午後に行う予定でしたが、なぜ女子が先で男子が後なのかと。ハッキリと仰ってはいないものの、ニュアンスとしては、なぜ大トリは男子なのか、というようなニュアンスでした。運営の我々も、昔からこう言うものだとしか思っていませんでしたので、慌てたというのは事実です」(貞本さん)

 それは、クレームというほど強烈なものではなかったが、先述したような「世の中の流れ」を汲み取り、貞本さんを含めた大会運営メンバーは、大会を通じて「男子が先、女子が後」の試合スケジュールを組んだという。

関連記事

トピックス

沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
ゴールデンタイムでの地上波冠番組がスタートするSixTONES
ゴールデンタイムで冠番組スタートのSixTONES メンバー個々のキャラが確立、あらゆるジャンルで高評価…「国民的グループ」へと開花する春
女性セブン
中居正広氏とフジテレビ社屋(時事通信フォト)
【被害女性Aさん フジ問題で独占告白】「理不尽な思いをしている方がたくさん…」彼女はいま何を思い、何を求めるのか
週刊ポスト
食道がんであることを公表した石橋貴明、元妻の鈴木保奈美は沈黙を貫いている(左/Instagramより)
《食道がん公表のとんねるず・石橋貴明(63)》社長と所属女優として沈黙貫く元妻の鈴木保奈美との距離感、長女との確執乗り越え…「初孫抱いて見せていた笑顔」
NEWSポストセブン
生活を“ふつう”に送りたいだけなのに(写真/イメージマート)
【パニックで頬を何度も殴り…】発達障害の女子高生に「生徒や教員の安心が確保できない」と自主退学を勧告、《合理的配慮》の限界とは
NEWSポストセブン
5人での再始動にファンからは歓喜の声が上がった
《RIP SLYMEが5人で再始動》“雪解け”匂わすツーショット写真と、ファンを熱狂させた“フライング投稿”「ボタンのかけ違いがあった事に気付かされました」
NEWSポストセブン
ドナルド・トランプ米大統領によって実施されているさまざまな施策が、米国社会に大きな影響を与えている(AFP=時事)
「極度の肥満のため死刑を停止して」「執行の際に座骨神経痛が痛む」女性に性的暴行し殺害したマイケル・タンジ死刑囚(48)の“驚きの要望”《トランプ大統領就任で加速する死刑執行》
NEWSポストセブン
中居正広の私服姿(2020年)
《白髪姿の中居正広氏》性暴力認定の直前に訪問していた一級建築士事務所が請け負う「オフィスビル内装設計」の引退後
NEWSポストセブン
これまで以上にすぐ球場を出るようになったという大谷翔平(写真/AFLO)
大谷翔平、“パパになる準備”は抜かりなし 産休制度を活用し真美子夫人の出産に立ち会いへ セレブ産院の育児講習会でおむつ替えや沐浴を猛特訓か
女性セブン
ネズミ混入トラブルを受けて24時間営業を取りやめに
《ゴキブリ・ネズミ問題で休業中》「すき家」24時間営業取りやめ 現役クルーが証言していた「こんなに汚かったのか」驚きの声
NEWSポストセブン
岡田結実
《女優・岡田結実(24)結婚発表》結婚相手は高身長の一般男性 変装なしの“ペアルックデート”で見せていた笑顔
NEWSポストセブン
ウッチャンナンチャンがMCを務める番組『チャンハウス』
【スクープ】フジテレビがウンナン&出川MCのバラエティー番組で小学生発言を“ねつ造演出”疑惑 フジは「発言意図を誤解して編集」と説明、謝罪 
女性セブン