西武から山川穂高をFAで獲得したソフトバンクが揺れている。日刊スポーツが1月11日、山川の人的補償で「西武が和田毅を獲得する方針を固めた」と報じたことが大きな衝撃を呼んだ。さらに地元テレビ局のテレビ西日本も追随。ソフトバンクファンから反発の声がSNS上で殺到する中、同日に西武が獲得を発表したのは42歳左腕の和田毅でなく、27歳のリリーバー・甲斐野央だった。球界関係者はこの舞台裏を明かす。
「和田がソフトバンクのプロテクト枠から漏れていたことは間違いありません。FAの人的補償は非常にデリケートな問題なのできっちりとした裏付けがないと書けない。日刊スポーツは自信を持って報じたと思います。ところが、ふたを開けて見たら西武が獲得したのは甲斐野だった。和田の意思を確認した上で西武とソフトバンクの球団間で話し合い、方針転換した可能性が高い。極めて異例のパターンでしょう」
過去にも人的補償をめぐる衝撃的な移籍劇はあった。2018年オフに巨人が西武・炭谷銀仁朗、広島・丸佳浩をFAで獲得した際、内海哲也(現巨人一軍投手コーチ)、長野久義をプロテクト枠から外して他球団に流出。人望が高かった両選手がチームを去ったことは大きな波紋を呼んだ。
だが、和田のケースは2人と状況が異なる。内海、長野は移籍当時、成績が下降気味で絶対的な主力選手ではなくなっていたが、和田は昨季チーム2位の8勝をマーク。2016年以来7年ぶりに投球回数100イニングをクリアした。小久保裕紀監督は有原航平と共に今季の先発ローテーションの座を確約していた。卓越した野球理論と並外れた練習量で若手の良きお手本としてもかけがえのない存在だが、実力でもチームに不可欠な左腕だった。福岡の民放テレビ関係者は首をかしげる。
「和田をプロテクト枠から外すことが理解できない。西武は先発の枚数がそろっているので獲得しないだろうと判断したかもしれないが、そうだとしたら見通しが甘すぎる。長いシーズンで先発投手は何人いても困らないですから。経験豊富な和田は当然獲得の有力候補になる。
ソフトバンクはフロントと現場で意思疎通が取れているのか疑問です。小久保監督が今季の先発を確約している投手をプロテクト枠から外してしまう。選手もチームのビジョンに不信感を抱きかねない。杉内俊哉、新垣渚、寺原隼人といった生え抜き功労者がソフトバンクでユニフォームを脱げずに引退していったこともあり、『このチームは生え抜きの扱いがひどい』という声を複数の選手から聞いています」