元日に発生した能登半島地震で、石川県内で220人の死者が確認されている(1月13日14時時点)。被害の大きい地域では家屋が完全に倒壊し、水や電気も復旧にはまだまだ時間がかかるため、住民のほとんどが避難所へ駆け込んでいた。
本誌・週刊ポスト取材班が穴水町の各避難所へ取材をしていると、外国人と日本人の男性2人組が「能登農業共同組合 JA会館」の前に車を止め、タンクにつめた水を車にかつぎ込んでいた。日本人男性は「まるおかクリニック」の丸岡達也医師、外国人男性は27歳のドイツ人のアルチャ・ツゥーゼさん。アルチャさんはどういった経緯で、穴水で被災することになったのか、話を聞いた。
クリニックでの取材中、余震で建物が揺れると、アルチャさんは横に座る記者の服の袖をクッと引っ張り、苦笑いをしていた。終始明るい笑顔で取材に応じていたのが印象的だったが、丸岡さんによると「家屋に挟まれ、亡くなった人を見た後はかなりショックを受けた様子だった」という。初めての経験だという地震は、やはり恐怖を感じさせるものだったようだ。
アルチャさんはGoogle翻訳を表示したスマホを片手に、日本語と英語を交えながら、ゆっくりと最初の来日当時を思い出しながら話してくれた。
「8~9年前、学生の時、バッグパッカーでここに来ました。日本語も何もわからない。けど、ネイチャーが溢れる場所が好きで、ここにホームステイをしようと思いました。そしたら、ここに住んでいる人が英語を話せる人を探してくれて、丸岡先生を見つけてくれた。それが最初の彼との出会いです。
ドイツに帰ってからも穴水の人とずっと連絡をしていて、もっとここに住みたいと思った。ドイツの大学を卒業して、去年9月にやっと穴水に来ることができました。今はワーキングホリデーのビザで日本にいます」
目を輝かせながら穴水に住み始めた経緯を語ったアルチャさんだが、地震が発生した時の様子をたずねると、それまで記者の目を見ながら話していたのが伏し目がちになった。それでも、大きなジェスチャーを入れながら現場の状況をこう話した。