〈母親と妹が下敷きになっています〉。スマホに表示された悲痛な叫びが、嘘だったとしたら──。能登半島地震が発生した直後、ネット上には救助を求める声が多数投稿された。しかし、根拠不明なものも多く、消防や警察の救助活動が妨げられる事態が発生。政府は「悪質な虚偽情報は決して許されません」と呼びかけた。防災アドバイザーの高荷智也氏がこう憤る。
「今回の地震では多くのデマが飛び交っています。虚偽の救助要請のほかにも、地震が人工的に引き起こされたとする『人工地震説』や募金詐欺とみられる投稿が相次ぎました。2011年の東日本大震災の津波の映像を今回の地震の津波と偽って発信したケースもあります」
過去の災害時にも「盗賊団が現地に向かっている」との偽情報や、住宅浸水のフェイク画像などが拡散された。災害時にデマが拡散されやすい理由について高荷氏はこう説明する。
「災害時は多くの人が不安になり、被災していない人も“少しでも役に立ちたい”と必死になります。そうした心理状態において、救助を求める声や役に立ちそうな投稿に接すると、信頼度のチェックを二の次にして『みんなに共有したい』という気持ちが先に立ってしまう。その結果、多くの人が“善意”をもって真偽不明の情報をネット上に拡散し、デマの蔓延に加担してしまうのです」(以下、「 」内は高荷氏)
デマの投稿者はそうした“善意ある人たち”の心理を狡猾に利用するという。
「反応を面白がってさらに不安を煽るようなデマを流す愉快犯が少なくありません。また、多くのデマが拡散されているX(旧ツイッター)は、昨年から投稿の表示数に応じて収益が得られる仕様になり、お金目当てで注目を集めるための過激な内容を投稿するユーザーも増えました」