地震発生から2週間以上が過ぎた今も被害の全容が見えぬ能登半島地震。長引く避難生活の助けとなるのが、炊き出しなどの支援だ。いまだに断水や停電が続き、多くの避難所生活者を抱える石川県七尾市では、1月19日、20日の2日間、JR七尾駅前で計2000食のうどんの炊き出しが行われる予定だが、そのニュースがインターネット上でにわかに関心を集めている。
この炊き出しは讃岐うどんの本場、香川県の丸亀市が行うという。遠く離れた七尾市と丸亀市だが、実は意外な接点がある。双方の交流が始まったのは、いまから50年以上前に遡る。
「1972年に行われた『丸亀お城まつり』に、七尾市に古くから伝わる和太鼓団体が出演したことをきっかけに交流が進み、1974年に親善都市提携を結びました。現在は毎年七尾市で丸亀市の物産展が行われています」(丸亀市関係者)
50年も続く親善都市の甚大な被害を知った丸亀市は即座に動いた。丸亀市観光協会の山田哲也事務局長が話す。
「1月5日から丸亀市職員が現地に赴き、どういった支援ができるのか情報収集や現状把握を行いました。そして今回の炊き出しを決めたのです」
振る舞われるのは、香川県が誇る名物、讃岐うどん。彼らには13年前に心に刻んだ教訓があった。
「香川県は、東日本大地震が起きた直後に被災地にうどんとつゆを送りましたが、断水が続く地域では麺を茹でる水が用意できませんでした。結果、すぐに食べてもらえなかったのです。被災地の現実を知らなかったゆえの“失敗”でした。当時、インターネット上では、“支援になっていない”といった心ない声も飛び交ったと聞いています」(前出・丸亀市関係者)
それ以降、どのような支援が求められているのか、事前に調査をした上で物資を送るようになったという。そして今回、丸亀市が“現地調達ゼロ体制”で挑むことについて、インターネット上では「丸亀市の支援は本気だ」などの称賛の声が巻き起こっているという。
「過去の反省を生かし、お椀やお箸、釜、水を入れたポリタンクなど、道具も材料もすべて車に載せていく“完パケ”状態で、七尾市に向かいます。だしを取るためのいりこや昆布はもちろん、ねぎや七味、しょうがやかまぼこなども用意し、市職員と市観光協会職員の総勢8人で向かう予定です」(前出・山田さん)
1月の七尾市の最低気温は氷点下を下回る日も。本場の讃岐うどんが、被災者の身も心も温めてくれるだろう。
※女性セブン2024年2月1日号