情弱とは情報弱者、主にネットで的確に情報を探したり活用したりできない人を指す俗称である。SNSなどで情弱であることが明るみに出ると「情弱乙(情報弱者お疲れさまです)」と哀れみをこめた罵りのリプライを投げられる。ほとんどの人は、自分は強者ではないにしても情弱ではないはずだと考えているはずだ。ところが、それらSNSでの言動によって隠れ情弱が露呈してしまうことがある。ライターの宮添優氏が、リアルでは頼りがいのある大人で決して弱者には見えない人たちが、何気ない振る舞いの痕跡によって「情弱」となってしまう危うさについてレポートする。
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スマートフォンの保有割合は世帯で90.1%、個人で77.3%まで上昇、Facebook、X(旧Twitter)、LINE、mixi、Instagram、SkypeといったSNSを利用している個人の割合は80.0%にもなるという(総務省『令和4年通信利用動向調査』調べ)。実名、匿名問わず、こうしたSNSアカウントを覗けば、その所有者の人となりや思想が見え隠れする。あまりに変な投稿をすれば悪目立ちし「炎上」状態に陥ることも少なくない。そして一見、真面目そうな投稿ばかりしていても、当人の「真実の姿」が露呈してしまうことがある。
よく言えば節約家なのかもしれませんけど、ケチ臭く見えて
「『俺は”ROM専”だから誰に見られても大丈夫』と言っていた彼のアカウントでしたが、確かに全く投稿はしていないものの、リツイートの全てが”お金配り”に関するものばかりでした。普段は温厚でいい彼なんですけど、この人大丈夫かな、という気になってしまった 」
筆者にこう打ち明けてくれたのは、都内在住の看護師・福田涼香さん(仮名・20代)。昨年夏頃から交際していた会社員の彼(30代)のX(旧Twitter)を見て、不安に駆られたという。ちなみに”ROM”とは「Read Only Member」の略で、平たく言えばSNSで発信をせず、他者の投稿を「見るだけ」、「見る専」と呼ばれることもあるユーザーを指す。
「有名私大出身で、割と大手の飲料メーカーに勤めていて、給与もそれなりにあるはずです。性格も良くて、この人なら結婚していいかな、と考えたほど。でもある時、自信満々に俺は炎上しない、誰に見られても恥ずかしくないと見せてくれたXアカウントは”フォローするだけで100万円”みたいな、怪しげな投稿のリツイートばかりしているものでした。本当に100万円もらえると思っているのか、実はとんでもない情弱(情報弱者)じゃないのかと不安になりました」(福田さん)
「お金配り」といえば、大手アパレル通販サイト「ZOZOTOWN」創業者である前澤友作氏の投稿が有名だ。前澤氏のXアカウントをフォローしたり投稿をリツイートして、実際にいくらかの金を手にした、という人もいる。ただし、この流れに乗っかった詐欺も横行しており「お金配り」アカウントを安易にフォローしたり投稿をリツイートすると、詐欺師によってリストアップされ、投資詐欺や美人局、その他ネットを使ったあらゆる詐欺のターゲットにされる。そのため、お金配り投稿にばかり反応する人は”情弱”(※情報弱者)だと嘲笑の対象になっている。そういった実情をニュースなどから見知っていた福田さんは、彼への不信が募り、ついには気持ちが冷めたという。