もうひとつの「森派繰越金──」の記事で指摘しているのは1998年ごろから実態のない繰越金を政治資金収支報告書に記載していた問題と会長(当時)の小泉純一郎・首相の関係だ。
〈(小泉)首相は2000年4月に森派会長に就任、同年の収支報告書には前年からの繰越金は約1億5000万円としていた。関係者によると、このような多額の繰越金は残っておらず、その報告を受けた首相が「でたらめは許さない」と激怒し、減らすように指示したという〉
問題意識がなければ小泉首相の美談になりかねない話だが、実態のない繰越金を知った時点で公表するのが本来のあり方であると批判的な記事にした。現在の事件をめぐっても、安倍晋三・元首相が会長就任後、不正を知り、止めさせたという話があるが、どう見るべきかの参考になるだろう。
いいかげんな報告書
今後、政府や自民党がとるべき措置に関しても手掛かりになる記事がある。
「旧橋本派の政治資金収支報告書 総務省、受理せず 15億円粉飾使途説明求める」(2005年7月12日付信濃毎日新聞朝刊)
再び記事を引用する。
〈旧橋本派は2003年までの報告書で、所属国会議員への選挙資金支給などを記載せず、虚偽の繰越金を記載し続けていたことが昨年の1億円献金隠し事件により発覚。今年3月に提出した2004年報告書で実態通りの繰入金を記載したが、虚偽繰越金との差は15億円以上となった〉
〈この差額について、同派は「当時の会計責任者と連絡がとれず、支出先が分からない」として使途不明金扱いとしたが、総務省は「いいかげんな報告書を受け取り、官報で公表することはできない」と政治資金規正法に基づく審査を実施した〉
つまり、政府は過去にさかのぼって正確な収支報告を求め、派閥側もそれに従うべきなのだ。
「使途」をめぐっても、私たちは選挙に際しての議員への数億円の「軍資金」支給が不記載だったことも報道済みだった。森派の重要な取材源が関係を断ち切るなどの反発もあったが、橋本派のある若手議員からは「自分たちレベルでは知りえなかったことを知ることができた」と妙な感謝もされた。