市も支援するはずだが…(障害者グループホームへの補助について説明する横浜市のHP)
姿を見るのが怖い
「残念」に思っているのは市長だけではない。同じ横浜市内で、障害者グループホームを運営するA氏は次のように語る。
「今後、同じような計画が持ち上がった時に、『住民が反対すれば事業者は計画を進めることができない』という悪しき前例になることを危惧しています。うちは5年前に開所したのですが、同じように地域住民の方々から反対意見が相次ぎました」
A氏は10年ほど前から訪問介護、訪問看護の事業所を運営している。
「訪問介護の利用者に、精神障害のお子さんを持つ方がいらっしゃった。“自分が死んだ後が心配だ”といった話を聞くうちに、障害者グループホームの設立を考えるようになったのです」(A氏)
地域福祉のために貢献したいと考える人に土地を借り、施設の建設が始まったのは2018年のことだった。建設開始の2か月後、地域住民から計画についての説明を求められたのだという。
「ほんとに、罵詈雑言と言っていいと思います。“土地を汚すのか”とか、“子供の安全が脅かされる”といった言葉が住民の方から出ました。中には“信号待ちをしている時に後から突き飛ばされたらどうするんだ”といったことを言ってくる方もいらっしゃった」(A氏)
その後も説明会を繰り返し、A氏の施設は何とか開所に至ったという。
「それから5年経ちましたけど、これまで問題なく運営できています」(同前)
ただ、現在でも施設の近隣には『地域住民を無視するな』や『運営反対』などの言葉が書かれた大きな旗を自宅の前に掲げる住民が存在する。
「グループホームの利用者は、日中は仕事のために作業所に出かけたり、リハビリのために病院へ出かけたりします。つい先日も住民の方々と話し合いの場が持たれたのですが、“姿を見るのが怖い”とこぼす方もいらっしゃる。もちろん、説明は続けていくつもりですが、溝を埋めるのはなかなか難しいのかもしれないと考えています」(A氏)
社会的なマイノリティーを特別視せずに共に暮らしていく、「共生社会」の時代と言われるが、その実現はまだ遠いのかもしれない。