大石静氏が脚本を担当し、女優・吉高由里子が紫式部を演じるNHK大河ドラマ『光る君へ』。柄本佑、町田啓太らが演じる藤原氏4人が「平安のF4」と話題を呼んでいる。このF4、史実ではそれぞれに「波乱の人生」が待ち受けている。ドラマの見どころとともに時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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おっとりまったりの平安絵巻かと思ったら、第一回でヒロインまひろ(紫式部・吉高由里子)の母が、怖い顔の藤原道兼(玉置玲央)に殺されるというすごい展開にびっくりした大河ドラマ『光る君へ』。
その中で注目したいのが、第三回「謎の男」に登場したイケメン四人組だ。メンバーは、初回にまひろと出会った藤原道長(ミチナガ・柄本佑)、藤原公任(キントー・町田啓太)、藤原斉信(タダノブ・金田哲)、藤原行成(ユキナリ・渡辺大知)。こうしてカタカナで書いてみると、アイドルユニットみたいだが、道長は右大臣・藤原兼家(段田安則)の息子で、公任は公卿のトップ関白の息子、斉信は大納言の息子、行成も藤原の名家の出身。つまりは当時の超エリート男子たち、平安時代の「F4」とも呼ばれる面々なのである。
間違いなく次世代の政治の担い手となる若き彼らは、御所警備のために宿直をしながら、緊張感はあまりなく、居室で話す内容はもっぱら女子のこと。モテモテの公任が、「これでも見よ」と手を広げると、そこには彼に恋する女子からの歌が記された色とりどりの文が。文を書いた女子について「歌はうまいが、顔はまずい」なんてことを平然と言う公任の横で、恋多き男の斉信は左大臣の娘がなかなか婿をとらないのは「俺を待っているのかも」と言い出す。女っ気がない道長は半ばあきれ顔だ。ここは部室か!?と言いたくなるような内容だが、実はこれこそが『光る君へ』の本質。平安に生きる男女の本音、世の中の見方をイキイキと伝えることが、このドラマのカギなのだ。
そんなわけで、何の不安もなさそうな四人組だが、史実を見ると、この後は結構、波乱の人生が待ち受けている。