1988年に『純ちゃんの応援歌』でデビューして以来、“女性が憧れる俳優”として、その折々で注目を集めてきた山口智子が、今年10月に還暦を迎える。昨年8月には、日本の旅を綴るYouTubeチャンネル『山口智子の風穴!?』を開設し、自らが面白いと思う映像を自力で発信することに挑戦している。そんな山口にロングインタビューを行った。【全3回の第3回。第1回を読む】
現在の山口智子を構成する重要な要素のひとつが“旅”だ。20代から各国を旅し、その国の文化や風土に触れてきた。
「初めての一人旅は、20代後半に訪れたポルトガル。スペインという押しの強い国の隣にありながら、あの地味さが大好きで(笑い)。特に地方の小さな村を巡りたかったから、ポルトガル語を必死に学んでから、国中を回りました」(山口・以下同)
2010年からは、ライフワークとなる旅と音楽のプロジェクト「LISTEN.」を始動。10年かけて26か国を旅し、世界の音楽文化の映像ライブラリーを作ってきた。
「どんな逆境にあっても、自分たちの歌や踊りとともに生きぬいてきた民族に出会う感動は、本当に素晴らしい!
音楽を入り口とした理由は、音には嘘がないから。一度発せられた音は、国境を超えて果敢に進み、人々の出会いとともに美しい形を生み出してきた。音楽は、水や食べ物と同じように、私たちになくてはならない生きるエネルギー源だと思います。これから宇宙時代が来ても、きっと地球外生命体とのコミュニケーションは、『音』から始まるのでは?(笑い)」
もっとも心にしみた歌は?と尋ねると、これまで巡った国の一つひとつを思い浮かべるようにしばらく黙した後、
「1つ選ぶなら、ジョージアの男たちがアカペラで声を重ねていくポリフォニー(多声合唱)。侵略や戦いの歴史の中で、愛する者を守るため、彼らは『歌』で心を1つにしてきた。いまは、その歴史に学ぶ過酷な時代かもしれません」
ジョージアの伝統として「スプラ」という宴があるという。
「テーブルでご馳走を囲み、みんなに選ばれた食卓の長が、知的なユーモアを交えた心に残るスピーチを繰り返しながら、一晩中グラスを掲げて乾杯し、歌い踊る儀式です。『遠くから訪ねてくれた友に乾杯』『この料理を作ってくれた女性たちに乾杯』と、乾杯ごとに声を重ねて歌うのです。ジョージアという国のモットーは『敵には剣を、友には杯を』。あまりに男たちの歌が美しく、感動で心が震えて泣きました」