国会で追及された岸田文雄・首相の「内閣総理大臣就任を祝う会」(以下、「祝う会」パーティーと略す)の違法パーティー疑惑。本誌・週刊ポストが1月22日発売号で報じたスクープがきっかけとなった追及だが、首相の答弁によって疑念はさらに深まった。問題の「祝う会」パーティーは2022年6月12日、首相の地元・広島市のリーガロイヤルホテル広島で開催され、会費1人1万円で約1100人が出席したと報じられた。単純計算でも約1100万円の収入があったと見られる。
だが、この「祝う会」パーティーの収支は、首相の政治団体や自民党支部の政治資金収支報告書に一切記載がない。岸田首相が代表を務める自民党広島県第一選挙区支部の政治資金収支報告書(2022年分)に、「祝う会」の団体名義で同年9月に約322万円の寄附がなされているだけだった。つまり、「祝う会」なる任意団体が主催のかたちになっていることで、かかった会場費など収支が全くわからなくなっているのだ。
1月29日の衆院予算委員会の「政治とカネ」の集中審議。立憲民主党の大西健介・代議士が本誌報道をもとに、「祝う会」パーティーは“闇パーティー”だと追及し、首相はこう答弁した。
「まずお尋ねの令和4年のこの内閣総理大臣就任を祝う会については、知事以下地元の政財界の皆さんが発起人となって開催していただいた、純粋な祝賀会であると認識をしています。その会の事務局の方から、振り込み先の口座開設など様々な手続きについて、不慣れであるという相談を受けて、私の事務所の人間がお手伝いをした。これは事実であり、そのように報告を受けております。
しかし、いずれにしても主催者は、この地元の政財界の皆様が集まって結成した政治団体とは異なる任意団体であって、私の事務所が会を主催したという指摘は当たらないと思っています。そして、当然、実際の収入も1000万円未満であったということであります。ということから、ご指摘は当たらないと考えています」
■破綻している「純粋な祝賀会」という説明
首相は祝う会パーティーを「知事以下地元の政財界の皆さんが発起人となって開催していただいた、純粋な祝賀会」と説明した。政治資金パーティーではなかったという主張だ。
政治資金規正法では、収入から経費を差し引いた差額を政治資金にあてることを目的としたパーティーを「政治資金パーティー」と定義しており、政治団体が主催し、事業の収支を政治資金収支報告書に報告しなければならない。
一方、「純粋な祝賀会」とは、たとえば、友人・知人らが会費制で開く形式の叙勲祝いなどのことであり、会費で会場費や参加者の飲食代、叙勲された人への記念品代などをまかない、利益を出さずに“収支トントン”にするものだ。そうだったのであれば、政治資金パーティーではなかったという説明は成り立つ。
だが、実態は“政治資金集め”が目的だった疑いが濃厚だ。
前述のように「祝う会」パーティーは会費1万円で、飲食の提供はなし。参加者には首相の「色紙」と著書『岸田ビジョン』が配られただけ。ホテルの会場費を考えても、最初から利益をあげることを前提に企画されていたことは明らかだ。お土産に議員の著書を配るのは政治資金パーティーの定番となっている。
しかも、パーティーの収益の一部が「祝う会」代表の名前で岸田首相の自民党支部に献金されたことから、岸田首相の政治資金集めを目的とした「政治資金パーティー」だったことは隠しようがない。
「純粋な祝賀会」という説明は破綻している。
■口座開設に岸田事務所が関与
本誌の取材によると、「祝う会」パーティーは準備段階から当日の会場の受付、経理まで岸田事務所が総出で取り仕切っていた。その点について首相はこう答弁した。
「振込先の口座開設など様々な手続きについて、私の事務所の人間がお手伝いをした」
口座開設に岸田事務所が関わったことを認めたのは重大な問題だ。
「祝う会」パーティーの案内状では、会費は広島銀行など3つの金融機関に開設された「衆議院議員 岸田文雄先生 内閣総理大臣就任を祝う会 代表 伊藤様」という名義の個人口座に振り込むことになっていた。
「伊藤様」とは、岸田文雄後援会の会長であり、岸田首相の政党支部の政治資金収支報告書で約322万円を寄附したことになっている「祝う会」の代表として名前がある、伊藤學人氏のことだ。だが、その伊藤氏は本誌の取材に、「『祝う会』の代表だったことも知らないし、寄附した覚えもない。経理には全く関与していない」という趣旨の証言をしている。