進まない経済回復
中国の不動産関連業界は、国内総生産(GDP)の3割を占めるとされる。「値上がり神話が崩れた高級マンションを買う人間はもういない」──中国の街で聞かれる呟きだ。不動産デベロッパーのデフォルトが相次ぐ中、街のあちこちに、資金繰りができないまま工事途中で放り出された廃墟のようなマンションが立ち並ぶ。主要70都市平均の新築価格は、2022年春から下がり続ける。
中国では、建設計画の段階で購入契約が結ばれ、多額の頭金とローンの支払いが始まる。
工事が止まったマンションでは、金を返せと叫ぶ人々が抗議行動を起こすなど、この数年、大きな社会問題となっている。これまで資産運用の手段だった不動産投資の夢が崩れただけではなく、これから、少子化で人口が減る中国では、長期的に不動産業界が復活するハードルは高い。
政府は「タンピン(寝そべる)」と呼ばれる、モノを持つことに関心がなく、働く意欲を失った若者の増加に警戒感を強める。中国国家統計局は、16〜24歳の若者の失業率は約20%と発表してきた。しかし、家で寝そべっていたり、親に頼って生活する若者(非学生)は1600万人と言われ、北京大学の張丹丹副教授は、「若者の失業率は46.5%に達した可能性がある」と指摘している。
しかも、ゼロ・コロナ政策の失敗により消費者マインドは冷え、節約嗜好が強まっている。住宅だけでなく、ポルシェやロールス・ロイスといった高級車、贈答品となる高級白酒などの売れ行きも軒並み減少している。つまり、中国の経済全体が低迷しているのだ。
中国国家統計局が1月17日に発表した2023年の経済成長率は5.2%と、かろうじて政府目標の5%前後を達成したかに見える。しかし、これをドル建てに換算すると、前の年に比べ、0.5%の減少だ。中国にとっては1994年以来、29年ぶりのマイナス成長となる。世界への経済的存在感もピークアウトに向かう。国連などのデータをもとに計算した中国の GDPの世界シェアは2023年に16.9%となった。2021年の18.3%から大きく下がっている。