自社の利益だけが目的
この点はNHKも同じだ。「NHKの画面に《熱中症危険。野外での運動はやめましょう》と文字の流れる中、高校野球だけ例外」なのは、誰がどう考えてもおかしい。最近は夏の甲子園をよく見に来るメジャーリーグ関係者も皆がおかしいと言っているのだが、こういう声はほとんど報道されない。
この夏の甲子園の主催団体はあくまで朝日新聞社と日本高等学校野球連盟(高野連)だが、会場を提供している阪神電鉄やその子会社であり高校球児とも縁が深い阪神球団が、「もっと高校球児の健康に配慮すべきだ」と声を上げることはできたはずだ。しかし私の知る限り、そんなことはグループ内の人間は誰もやっていない。「商売第一」ではないか、と批判されても仕方があるまい。
理想を言えば、資本的にはともかく経営的には阪神電鉄とまったく縁を切った阪神球団が野球ファンのために、野球の専門家による運営で「アレ(優勝)」をめざし、野球界全体の問題点についても改善をめざすべきなのである。
たとえば、夏の甲子園大会についてなら「この大会は、とくに熱中症が社会問題となってきた現状では露天の球場でやるべきではないのだから、しばらくは東京ドームに会場を移しその間に甲子園球場を開閉式に改造するなどの方法で、将来有望な人材の健康を守るべきだ」などという提言がなされてもおかしくない。だが、そんなことを言っただけで朝日新聞は「東京ドームなどとんでもない(読売新聞に利益が取られる)」と反対するだろう。
大切なのは野球界の発展でも無く、高校球児の健康を守ることでも無く、自社の利益をむさぼることだけが目的だからだ。「炎天下の運動は危険」なのに、それも生命を失う可能性を医師が指摘しているのに、抜本的な改善策を打ち出さないのがその証拠だ。
もっとも、この点ジャイアンツも「東京ジャイアンツ」と言うべきなのを常に「読売ジャイアンツ(東京読売巨人軍)」と呼ばせているように、「人寄せパンダ」ならぬ「新聞の拡販材料」として創設された歴史がある。
読売グループの日本テレビが制作している情報番組『ズームイン!!サタデー』の一コーナーでは、ジャイアンツの選手だけの近況を伝えるコーナーを、いまだに「プロ野球熱ケツ情報」と呼んでいる。こういう姿勢を改めない限り、日本の野球もアメリカ野球に追いついてきたという人もいるが、アメリカのメジャーリーグ、たとえば、ロサンゼルス・ドジャースなどの経営姿勢とくらべてまだまだ雲泥の差があるということがわかるだろう。
前回、同様の病根を持つと考えられる宝塚歌劇団の問題に触れた際、同歌劇団が依頼した弁護士による調査チームが「死亡した女性の額にヘアアイロンが当たったのが上級生による故意か不注意かを判断するのは困難」と結論し、これを同歌劇団が公式見解として発表した件について「この人たちはショービジネスに関してはまるで素人だな」という「感想」を述べた。「その理由は次回述べよう」とも記したので、これからそれを述べよう。
もっとも、その大前提として「そもそもお前はショービジネスについてクロウトなのか?」という疑問を持つ向きもあるかと思うので念のために述べておくと、最近私はノンフィクションに専念してフィクションつまり小説や戯曲を書いていないが、昔は書いていたこともあり上演されたものもある。その縁で男優や女優の知り合いも少なからずいるし、芸能界はまったく未知の世界では無い。