ネットフリックスやアマゾンプライムビデオなどネット配信全盛の時代、地上波ドラマは窮地に立たされている。だが、そんななかでもテレビだからこそできることを模索し、一石を投じる作品もある。『みんなの朝ドラ』著者でライターの木俣冬氏は、放送中の『ブギウギ』(NHK)を挙げる。
「毎週のように本格的なステージのシーンが出てきて、掛け値なしに楽しめます。笠置シヅ子さんや淡谷のり子さんなど、昭和を彩る偉大なエンターテイナーをモデルにしたキャラクターが続々と登場し、昭和にこんな素敵な人たちがいて、みんなが元気だったんだという日本の価値を感じられるのは、海外ドラマにはない魅力。全体的に落ち込んでいる時代に、視聴者を明るい気持ちにさせてくれる素晴らしい朝ドラです」(木俣氏・以下同)
木俣氏が「ネット配信が優勢になるなか、テレビドラマの復権をかけた意欲作」とするのは、昨年大ヒットした『VIVANT』(TBS系)だ。
「『半沢直樹』をヒットさせたTBSの福澤克雄監督がオリジナル脚本に挑戦した作品です。昨今のテレビドラマは視聴率が落ち、予算のかからないような作品が増えるなかで、『VIVANT』は大規模なモンゴルロケを敢行して、壮大なスケールの物語を展開。福澤監督だからこその豪華な俳優陣も集結しました。
役所広司さんが演じたテロ組織のリーダーの歩んだ人生からはバブル崩壊からの失われた30年を問いかけるようなテーマ性もあった。これからのテレビドラマの可能性を開きました」
本作はスケール感だけでなく、「配信にはない一体感が生まれたことも大ヒットの秘訣」と語る。
「毎週放送後にSNSで多くの人が感想や考察を投稿したり、『日本全国で視聴者が同じ時間に作品を観る』ことの貴重さを改めて気付かせてくれた。好きなタイミングで一気に視聴できる配信サービスとは違い、『続きが気になる』『来週まで待てない』というワクワク感を『VIVANT』は見事に出していました」