女子大生で本格デビューをした女優人生では、「お嫁さんにしたい女優ナンバーワン」や「三択の女王」などの称号も得た。
「ほほほ! 『クイズダービー』の『三択の女王』の名付け親は、大橋巨泉さんですね。ニックネームをつけるのがお上手な方でしたので、三択問題のほうがいくらか私の正解率がよかったんでしょう。はらたいらさんに倣って新聞や週刊誌を端から端まで読んでみても成績はさっぱりで、結局いつも、いきあたりばったりの解答でしたから(笑)。『お嫁さんにしたい女優』も皆さんに親しんでいただきましたが、私自身はそのキャッチフレーズに追いついていなかった気がします。当時はドラマの役柄やコマーシャルも新妻っぽいイメージが先行して、“エプロンが似合う人”とされていた時代があったんです。ありがたく感じる一方で、どんどん自分とはかけ離れてしまって、もうひとり別の『竹下景子』という人がいるような、そんな感覚がずっとありました」
年齢を重ね、これからの自分のイメージは等身大でありたいと語る。
「作品を通じてご覧くださった方にも、道ですれ違った方にも、“ご近所の景子さん”と感じていただけるような存在になれたらいいなと思うんです。目が合えば『こんにちは』と気軽に会話が始まるような、そんな身近な感覚を持っていただけたら一番いいなって」
保護犬を引き取って1年4か月になり、1日に2回は散歩をするという。
「その子のおかげで、私もよく歩けるようになって疲れなくなりましたし、その時々にお会いするご近所さんと交わす立ち話が、日常のちょっとしたアクセントに。時候の挨拶が中心ですが、『絵を描いているのよ』というお話から自作のポストカードをいただくこともあったりしてね。息子たちが小さい頃は学校のママ友とのお付き合いもありましたが、犬のママ友としての交流が気楽で、今がとっても楽しいんです!」
散歩中に近所のおいしいお店を教えてもらい、家族ででかける計画もあるそう。気取らない日常をのびのび謳歌する竹下さんは、女優としても、70代の自分だから醸し出せる味わいを役に込めていきたいと語った。
【プロフィール】竹下景子(たけした・けいこ)/1953年生まれ、愛知県出身。NHK『中学生群像』の出演を経て、1973年にNHK銀河テレビ小説『波の塔』で本格デビュー。映画『男はつらいよ』のマドンナを3度務めるなど女優として活躍。「世界の子どもにワクチンを日本委員会」のワクチン大使、国連WFP協会親善大使としても活動する。
取材・文/渡部美也