スポーツ

【アジア杯の解説を検証】松木安太郎氏は絶叫しているだけではなかった 日本の選手交代への苦言と戦術面での的確な指摘

解説の松木安太郎氏は、戦術面でも的確な指摘をしているという

解説の松木安太郎氏は、戦術面でも的確な指摘をしているという

 AFCアジアカップの準々決勝で日本はイランに敗れ、Jリーグ開幕前年の1992年以降ではワーストタイとなるベスト8に終わった。グループステージ(GS)の2位突破も、結果に大きく響いたのではないか。松木安太郎研究家でライターの岡野誠氏は「GS2戦目のイラク戦で解説の松木さんは的確な指示を繰り返していた。その通りに動いた時、試合が好転していた」と言う。かつてヴェルディ川崎を連覇に導いた名将・松木安太郎氏の指摘とは──。以下、岡野氏が「松木氏の解説」を解説する。

【※注:中継での松木氏の言葉はできるだけ忠実に再現するが、「まあ」「やっぱり」など読みやすさを考えて省略する場合も。分数はテレビ朝日の表示を参考に話し始めた時間を記載】

 * * *
「おい!」「よし!」「打て!」「いいボールだ!」

 松木安太郎氏は日本代表の試合になると、絶叫しているだけのように思われがちだ。しかし、実際には戦術を提示したり、選手交代について意見も述べたりしている。1月19日、テレビ朝日系で放送されたグループステージのイラク戦を振り返ってみよう。前半、FWフセインに2点を決められ、無得点で折り返した日本は後半0分、DF谷口彰悟に代えてDF冨安健洋を投入。松木氏は、ディフェンス1枚のみの交代に疑問を呈した。

【後半開始前】
松木氏:僕はやっぱりスピードのある選手でね、早い段階で1点をね、取りに行く交代かなとは思ったんですけども。ディフェンスでしたね。

【後半0分52秒 】
松木氏:(イラクの守備は)スピードのある選手に結構手こずってたんでね、その辺をポイントにできるような選手をね、起用するかなという感じはありましたけどね。どこでまあ……どっかでまた代えてくるでしょう。

 0対2とリードされたから言っているのではない。松木氏は前半からイラクの弱点を読み、足の速いFW浅野拓磨やMF伊東純也の有効活用を勧めていた。

【前半18分44秒】MF遠藤航がFW浅野へスルーパスも通らず
松木氏:イラクのね、真ん中の4番、5番を考えるとね、スピードのある選手にちょっと手こずる感じがあるんでね、どんどん使っていいと思いますよね。

 後半6分には同じ解説の内田篤人氏、実況の吉野真治アナウンサーが並ぶ放送席で、こんなやり取りもあった。

内田氏:打開策が難しいのも、ある程度自分たちから攻撃的に出て、0対3になったら、かなり厳しくなりますんで。そこら辺のバランスも含めたら、いろいろ考えるとね、難しいんですよね。
(中略)
松木氏:ディフェンスライン……もちろん(イラクの)18番(のフセイン)にやられたけども、18番はもういないから(前半限りで交代)。だから、ディフェンスをいじるのも、まあ1つの手かもしれないけども、俺は中盤から前のね、攻撃面での手直しっていうのをね、後半に見たかったなと思いますね、個人的には。

 イラク戦で松木氏は11回にわたって「まだ時間はある」関連の発言をしたが、この時は吉野アナが「まだ時間は十分に残されています」と言った後、追随せずに攻撃的な采配を望んでいた。この4分後、足の速い伊東純也が左サイドを突破し、ゴール前の浅野へクロス。イラクが止めに入るも、PKの判定が下された。

松木氏:完全にスピードですよ。
アナ:伊東純也のスピード、そして浅野のスピード。
松木氏:ここがやっぱりね。
アナ:日本の武器がペナルティキックをもたらしました!

 結局、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によってPKは取り消されたが、内田氏が「いい形作れましたから」と振り返ると、松木氏は「スピードだよ」と繰り返し、「だからやっぱり、ポイントはスピードだって。今日はね。後半」と畳み掛けた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

百合子さまは残された3人の仲を最後まで気にかけられたという(2023年6月、東京・港区)
百合子さま逝去で“三笠宮家当主”をめぐる議論再燃か 喪主を務める彬子さまと母・信子さまと間には深い溝
女性セブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン