SNSが普及し、有名人もこぞってアカウントを作成し発信するようになり、ライブやイベントへ行かずとも直接、言葉を交わしてコミュニケーションをとれる存在になった。同時にトラブルも激増した。最近は、このトラブルがサービス業に就く人たちにも広がり、店員の名札に本名をフルネームで記載するのをやめる動きが広がっている。一方で、客と親密なコミュニケーションをとることが業務の一環となっている接客業では、予防策を講じるどころか危険が増している。ライターの宮添優氏が、被害が続いても問題が論じられない業界で働く女性たちの悩みをレポートする。
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「この2~3年で、都内の風俗業で働く女性が被害者となる事件が相次いでいます。2021年には立川市で、2022年は台東区吉原で女性が殺害されました。つい先日も、台東区鶯谷のホテルに男が立てこもる事件が起きましたが、人質となった女性(のちに無事解放)は派遣型風俗店で働く女性でした」
大手紙社会部記者がこう振り返るように、風俗業で働く女性が殺害されたり、傷つけられる事件が都内に限らず頻発している。もっとも、こうした事件の場合、被害者女性の属性が報じられることの影響を警察やマスコミが考慮し、報道自体が抑制的になる傾向が根強い。一部SNS上などでは「被害者は××の店舗で働いている」などと真偽不明の情報が飛び交ったりもするが、結局のところ真相は曖昧になり、事件への関心や被害者への同情も薄くなる。立てこもり事件を取材した大手民放記者も次のように吐露する。
「鶯谷の事件でも、被害者女性の名前はおろか職業、被疑者との関係はほぼ伏せられました。”なんだ風俗関連の事件か”という空気が記者やカメラマンだけでなく、世論にも醸成され、無かったことのように闇に葬られてしまう。この数年、こうした傾向に拍車がかかっているような気すらします」(民放記者)
だからなのか、なぜこうした事件が相次ぐのかについて、表立って議論される機会は皆無に近い。ただ、どんな状況であっても、仕事を理由に「被害に遭っても仕方ない」と結論づけてよいわけがない。
客とのコミュニケーションの形が変わった
それでも、界隈で事件が相次ぎ、さすがに実際に仕事で関わる関係者たちは防犯に努めているのかと思ったら、実情は真逆であるという。そう訴えるのは、埼玉県内で彼女たちが働く店舗を運営する会社の役員、森本大輔さん(仮名・40代)だ。
「表向きはタブーだとされている、客に恋愛感情を匂わせる”色恋営業”などを行い客から逆恨みされた挙句に女性が被害に遭う、という事例も確かにある。しかし、それだけが店で働く女性が狙われる事例が増えた原因ではないと思います。紹介サイトの隆盛や、SNSを通じて女性たちが客と直接連絡を取り合ったりすることで、女性と客の距離が極端に近づき過ぎてしまったことが最大の要因ではないでしょうか。働く女性たちは間違いなく、以前より危険な状況に遭遇する可能性が高まっています」(森本さん)