いよいよ名曲「東京ブギウギ」が生まれた瞬間が描かれ、NHKの連続テレビ小説『ブギウギ』がクライマックスを迎えている。
村山興業の御曹司で最愛の人である愛助(水上恒司、24)を亡くしたヒロイン・スズ子(趣里、33)だが、モデルとなった笠置シヅ子も吉本興業の創業者・吉本せいの御曹司と恋に落ち、同様の悲劇を乗り越えている。
『ブギウギ』にはその吉本興業の芸人たちも出演している。これまでの友近、なだぎ武、麒麟の田村裕、ジャルジャルの後藤淳平と福徳秀介などの演技が話題になったが、なかでも反響を呼んでいるのが村山興業の東京支社長・坂口を演じるメッセンジャーの黒田有(54)だ。テレビ評論家の吉田潮氏はこう語る。
「当初はスズ子とボン(愛助)の恋路を邪魔しようとしますが、次第にスズ子の魅力や歌手としての実力を認め、味方の立場になった。組織人として村山興業の社長(小雪、47)には頭が上がらず、ビビりまくりながらスズ子たちの交際を認めてもらえるよう説得したりする。あの強面にダミ声が最初は嫌な感じなのですが、どんどん“本当は情が深い人なんだな”というのが沁みてくる、味のあるキャラクターです」
劇中で坂口が「ガキの使いやあらへんど!」と言い放つと、吉本芸人らしいセリフだと視聴者も沸き立った。坂口を演じる黒田は、関西のバラエティや情報番組の出演が多いが、役者としての活動は数えるほどだった。吉田氏が続ける。
「芸人さんはコントや漫才で演技力が磨かれているし、人を楽しませることに長けているのでドラマとの親和性が高い。
黒田さんはNHK大阪局制作の『六畳間のピアノマン』(2021年)の第1話に出演した時のパワハラ上司の役が強く印象に残っています。目力が強く、大阪弁でガンガン責め立てる救いようのないクズで、最終的には成敗されてスッキリしたものです(笑)。同作の脚本は『ブギウギ』と同じ足立紳さんで、その縁もあって黒田さんが坂口役に起用されたのかもしれません」
物語はスズ子が娘を育てながら再びステージに立つことを決意するが、視聴者からは愛助が亡くなったことで坂口が登場しなくなるのではと寂しがる声があがっている。吉田氏もこう語る。
「途中からマネージャーの山下(近藤芳正、62)とコンビのようになって、ボンの体調を心配したり妊娠したスズ子をサポートしたりとオジサン2人が抱き合ってワチャワチャするのがとにかく微笑ましかった。手練れの近藤さんが機微の部分を演じて、黒田さんはその後ろで苦虫を噛み潰したような表情で立っているだけでも画になりました。今後、黒田さんの出番が減ってしまいそうで、もう見られなくなると思うと私も寂しいです」
※週刊ポスト2024年2月23日号