ライフ

公式キャラクターへの批判に動じなかった三重交通 「文句を付けたもの勝ち」の風潮にブレーキかけた意義

三重交通の公式HP

三重交通の公式HPより

 多様性は尊重されるべきだが、時に思わぬところから槍が飛んでくる時代でもある。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
 世の中には何でも「性的」に見える人が、一定数いらっしゃるようです。その方々にかかれば、世界遺産の屋久杉も「この枝ぶりは性的だから伐採すべし!」と言われてしまうかもしれません。

 先日、三重交通が創立80周年を記念して発表した公式キャラクターに対して、その手のセンサーが発達している方々から、「女性キャラクターがくねくねポーズをしているのが性的だ」「くびれがあるのが性的だ」という批判が寄せられました。露出が多いわけでも巨乳なわけでもないキャラクターを見て「性的でケシカラン!」と憤ることができるのは、ある意味、すごい才能です。

 いや、そういう方々が振り回している批判の根拠を知らないわけではありません。女性キャラだけにくねくねポーズをさせているのはおかしい、かわいさを強調しているのは不自然だ、公共交通の広告としては不適切だ……といったことを主張なさりたいんですよね。どれも、見事に「批判したいがための屁理屈」と言えるでしょう。

 世の中は、少しずついい方向に変化しています。かつては「性的でケシカラン!」という批判の声が上がると、何でもいいから誰かを叩きたい人たちが群がってきて、企業や団体の側も「面倒臭いからやめておこう」と引き下がるケースが多々ありました。そんな成功体験の快感が忘れられずに、鵜の目鷹の目で標的を探している人がいるようです。

 しかし、三重交通は立派でした。批判の声がまだまだ盛り上がっていた2月初めの段階で、「今回のキャンペーンに変更はありません」と言い切ります。さすが三重交通! 三重県生まれの私にとっては生まれて初めて乗ったバスであり、今も伊勢市内で伊勢うどんを食べ歩くときには三重交通のバスが頼りです。日頃から親近感と恩義を感じている三重交通が、イチャモンを毅然とはね付けてくれて、心からの拍手を送りました。

 もし、自己満足を味わいたいだけのイチャモンに屈していたら、その手の人たちを調子づかせて、また一歩、世の中が窮屈になるところでした。しかし、屈しなかったことで、結果として「文句を付けたもの勝ち」という風潮にブレーキをかけてくれました。いや、バスだけにと言いたいわけではなく。

 世論の後押しも見逃せません。批判の声が上がると同時に「このキャラの何がいけないんだ」「三重交通がんばれ」という応援の声が、勢いよく巻き起こりました。そう、何でもかんでも不適切よばわりしたがる人たちに対する違和感や反発は、しっかりと積み上がっています。それも、そういう人たちがどうでもいい文句をせっせと付けてくれたおかげと言えなくもありません。何事も塞翁が馬ですね。

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
記者会見を行ったフジテレビ(時事通信フォト)
《中居正広氏の女性トラブル騒動》第三者委員会が報告書に克明に記したフジテレビの“置き去り体質” 10年前にも同様事例「ズボンと下着を脱ぎ、下半身を露出…」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
回顧録を上梓した元公安調査庁長官の緒方重威氏
元公安調査庁長官が明かす、幻の“昭和天皇暗殺計画” 桐島聡が所属した東アジア反日武装戦線が企てたお召し列車爆破計画「レインボー作戦」はなぜ未遂に終わったか
週刊ポスト
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン